日本エネルギー会議

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電源構成の見直し

経済産業省は2015年7月に「長期エネルギー需給見通し」を決定し、2030年における電源構成について、再生可能エネルギー22~24%程度、原子力20~22%程度など、目安とすべき数値を定めた。基本的な考え方は、「安全性、安定供給、経済効率性および環境適合に関する政策目標を同時達成する中で、徹底した省エネルギー(節電)の推進、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の効率化等を進めつつ、原発依存度を可能な限り低減する」というものだ。「長期エネルギー需給見通し」は3年ごとに見直しが図られることになっている。
検討段階からコスト算定など、さまざまな異論が出ていた需給見通しだが、既に次回の見直しで検討されるべき問題が数多く見つかっている。

1.
需要予測に使われた経済成長が、2013年から2030年まで年率1.7%となっているが、ここ数年の経済成長率からしても現実的ではない。電力需要もここしばらくは毎年数%の割合で減少を続けており、人口減少、省エネ普及、再生可能エネルギーなどで電力自給自足を目指す自治体の増加などを考えると2030年の電力需要はもっと低く見積もる必要がある。
 
2.
原子力のコストは、43基が運転再開することを前提に算定されている。いまだ再稼働のめどが立っていない原発が大半を占めているために、現実的な運転基数に入れ替え再計算が必要となる。イギリスのヒンクリーポイント原発計画に関するイギリス政府の予測調査で、「2025年頃には原発よりも風力発電の方が安上がりなことが判明」と報じられており、我が国だけが原子力が一番安いということにはならないはずだ。(既に原発の電気を固定価格で買い取る制度を検討しているなど、我が国の関係者間でも原発が安くないということが認識されつつある)
我が国の場合、
・「事故リスク対応費」は、現実に福島第一原発の事故にかかわる費用が増加し続けており、これを反映する必要がある。
・「追加的安全対策費」も各原発での実績を反映させることになる。(各電力会社は、実際にはこの見積りの約2倍の対策費を使っている)
・「核燃料サイクル費用」も中間貯蔵施設建設の必要性などが見えてきている。いまだに核燃料のサイクル設備が稼働していないにもかかわらず、使用済みの燃料を2020年から2045年にかけて全部再処理できることを想定して費用が試算されている。さらに高レベルの放射性廃棄物の処理費は、1キロワットアワー当たり0.04円しか見込んでいない。最終処分場のめども立っていない状況では、その費用を試算すること自体が極めて困難だが、だからといって見積に入れないのは不自然だ。
 
3.
近年の太陽光パネルの大幅な下落で太陽光発電の発電単価が現状のペースでコストが下がっていった場合、2020年にはメガワット当たり20ドル未満となり、太陽光発電はもっともコストが低い電源となると欧米では予測している。しかし、夜間は発電出来ず、昼間も不安定な出力であることから、火力発電や原子力発電と並べてコスト比較することはおかしい。太陽光や風力の場合、蓄電池を組み合わせるなどして安定的な供給が可能であるようにするための費用をコストに上乗せすべきである。

4.
現在、住宅向けの燃料電池を使ったコージェネ(エネファーム)が大きく伸びており、今後は企業向けでも採用される見込みで、従来以上のペースで電力量が増える可能性がある。2030年に1540億キロワットアワーの電力をコージェネで生み出すことができると予測されており、かりに我が国の総発電量が現在よりも多い1兆キロワットアワーになった場合でも、コージェネの比率は15%になる可能性がある。

5.
電源構成についての基本的な考え方が、「安全性、安定供給、経済効率性および環境適合に関する政策目標を同時達成すること」であるならば、石油火力発電は、早期に退場させるべきであるが、同時に石炭火力発電についても、温暖化ガス排出抑制費用を確実にコストに乗せするべきである。(現在は排出権買取費用などになるが、将来的にはCCSなどの費用)

「長期エネルギー需給見通し」は、狙いとしているような「再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の効率化等を進めつつ、原発依存度を可能な限り低減する」ためのものではなく、経済産業省と経団連や電力会社が共謀して原発や関連産業をなんとか守り通すためのものではないかと一部から疑いを持たれた。それは少数の委員の指摘や不満というかたちで伝わって来ている。過去の実績として再生可能エネルギーより不安定な原発を「重要なベースロード電源」に入れる。原子力を守るための理屈をいろいろ考え出し、疑問に誠実に答えず、矛盾はそのまま、パブコメなどは集めるだけで取り上げず、形式的にルールにしたがってやったと開き直る。そもそも委員の選出から役所ペースだ。この3年間で原発の再稼働を進め、なんとか体勢の立て直しを図り、現実を計画に近づけるという役所の思惑が透けて見える。

これによって何が失われたかと言えば、エネルギー政策に対する国民の信頼と原子力や再生可能エネルギーに対する正しい理解である。正々堂々と納得のいく討議を繰り広げ、信頼を得るべきせっかくのチャンス、推進派反対派をテーブルにつかせ公開の場で渡りあう絶好の機会を逃してしまった。異論があろうとなかろうと、討議半ばにして「委員長一任」。ここだけはかわらないのが不思議だ。

既に述べたように、需給見通しや電源構成を決める際の前提がこの2年間で次々に崩れている。このままでは、年と共に現実とはかけ離れた計画になるのは明らかだ。早期の見直しが必要であり、見直しにあたっては現計画にこだわることなく再生可能エネルギーの問題点も含めて基礎データから検証していく必要がある。

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