日本エネルギー会議

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長期停止の影響

2011年3月に福島第一原発の事故が起きてから、全国の原発のほとんどがかつて経験したことのない長期の停止をしている。それまでも不祥事などで複数の原発が一年以上も停止したことがあったが、ほぼ全基数が5年以上も停止したことはない。しかも、この状況がまだしばらくは続くだろうというところに問題の深刻さがある。このような状況下、ヒト・モノ・カネについて、どのような影響が現れ、それに対する対応が適切に行われているかを検証する必要がある。

まず、人について。原発に勤務する電力会社社員とメーカーや工事会社の社員が運転実務という本来の業務を行えていない。運転員や保修員など発電所の運営にあたっていた人は、継続して原発で勤務をしているが、実質的な運転に関わる業務は出来ていない。運転員は交替勤務で引き続き24時間原発を維持しているが、業務の主体は現場のパトロールであり、起動停止や運転中の試験にかかる操作はしていない。運転員の訓練はシミュレータによるものだけとなって、実機での経験が5年以上も空白となっている。

5年前に在席していた運転員は、その頃配属された新入社員も含め運転経験を積み重ねることが出来ず、新人にノウハウを伝承するうえでも大きな支障をきたしている。かつて社として初めて原発を建設した電力会社は、すでに運転中の他社の原発に運転員を送り込んで、実機の操作を経験させていた。いまやほとんどの電力会社がそのような状況に置かれている。

保修員やメーカー・工事会社の社員に関しては、新基準に合格するための追加の安全対策工事が数多く行われて、定期検査工事や建設工事のような経験が出来ている。しかし、ここにおいても原発が実際に運転している状況での経験は出来ていない。これは若手の保修員などにとって、育成上大きなマイナスである。この5年間に関係する社員は誰もが5歳年をとっており、すでに5年にわって団塊の世代を送り出している。一方採用は若い世代が少なくなる中、相変わらす厳しい状況が続いている。

いくつかの原発では廃炉が決まったが、これから廃炉に当たる人材も必要で、運転員などの他職種への配置転換、そのための教育訓練が待っている。原発運転再開に向けて、各電力会社では安全審査の申請書作成、対策工事の計画実施などこの方面に力を入れており、そのしわ寄せが関連部門や他の部門に及んでいる。電力自由化対応のための人材確保も必要とされる中、いかに原子力部門の人材確保をしていくかは、どの電力会社も頭が痛い問題だ。西日本では電力会社が原発の運用についてグループ化する動きがあるが、その誘因は人材対策にもあると考えられる。

原子炉メーカーとその傘下の機器製造企業は、新規建設が続かないために社内の人材確保と技術伝承に苦心している。新基準による改造工事、廃炉工事はこれを救うかに見えるが、次世代炉の建設のための陣容を維持するには不足だ。メーカーは原子力以外にも分野を持っているため、優秀な人材は他部門から狙われやすい。一旦、原子力から離れてしまうと、引き戻すことはなかなか難しい。電力会社はメーカーや工事会社、特に子会社である工事会社の経営状態を見ながら、発注を調整してきたが電力会社本体もそうした余裕がなくなっている。国や電力会社の研究開発費がかつてのように潤沢ではないことも影響がある。

かつて国は国内第四番目の原子炉メーカーはつくらせないこととし、各電力会社とセットで日立、東芝、三菱の3グループ体勢を堅持してきたが、期待をかけた原発輸出も思わしくない状況では、人材問題と余剰設備削減のために鉄鋼メーカーや石油会社のように提携、合併に向かわざるを得ないのではないか。

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