日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

電源構成の見直し(2)

エッセイ801では現在の「長期エネルギー需給見通し」に使った条件を見直すべきだとしたが、その内容に関して読まれた方よりコメントをいただいた。今回はこの件に関する情報を追加したい。

問題点1:
年率1.7%の経済成長率は高過ぎであり、現実的ではない。電力需要もここしばらく毎年数%の割合で減少を続けており、2030年の電力需要はもっと低く見積もる必要がある。

読まれた方からのコメント:
確かに想定されている経済成長率は高目であるが、同時に想定されている省エネによる消費削減比率も震災前(2013年度)に比べて2030年には17%の需要削減を目標に設定している。これはオイルショック時代に懸命になって達成した省エネのペースと同じ割合であり、余地が少ない現在では実際には達成が難しいものであろう。いずれも達成が難しいものではあるが、両者が打ち消し合って2030年の電力需要が2013年度と同じ程度のレベルに設定されているので、特に現時点で軌道修正するものでもないように思う。産業界や輸送業界で一次エネルギーの省エネを進めるには「電化」が一番有効であり(例:自動車の電化、産業用熱を電動ヒートポンプを利用して作る)、温暖化防止対策としても電化は必要と考えられるので、電力需要が下がり続けるというのは現実的ではないと思われる。

この件に関する追加情報;
(1)経済成長について
経済成長について言えば「高目」などというより意図的な過大予測だ。日本の経済成長率は2011年にマイナスになり、アベノミクスが始まってからも低迷している。今後も人口減少、高齢化、世界の政治経済の混乱など考えると、2030年まで平均1.7%/年(GDPが1.34倍にもなる)ということは政策目標として無理がある。すでに基準年より4年間低迷しており、下のグラフの線から外れてしまっている。今から2030年にかけて人口が約1千万人減ることは確定的であり、それに抗してGDPを引き上げるのは至難の業であろう。


単位: %
※数値はIMFによる2016年4月時点の推計
※実質GDPの変動を示す。
※SNA(国民経済計算マニュアル)に基づいたデータ
日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、8月15日に内閣府が公表した2016年4~6月期のGDP速報値を織り込んで予測した結果、16年度の実質成長率は0.6%の見通しとなった。8月2日に決定された経済対策は16年度末から執行が始まり、17年度に効果を及ぼす。17年度の実質成長率は0.8%の見通しになったと報じられている。

(2)電力需要の減少予測について
電力需要については、2010年以降連続マイナスであり、すでに過去3年間は大幅に下げている。電力の需給調整を担う電力広域的運営推進機関が2010年度から2015年度までの需要の状況をまとめた報告書によれば、年間の需要電力量は2010年度の1兆66億kWhから減り続けて、2015年度には10.2%少ない9041億kWhまで縮小した。

全国の需要電力量の推移

出典:電力広域的運営推進機関
スマートジャパン

震災直後に大幅に減少した後、2012年度と2013年度は1%前後の減にとどまったが、2014年度と2015年度には2%前後の減少率になっている。LED照明や省エネ設計の建物や電気製品の普及を考えると消費電力が毎年着実に小さくなることが予測出来るため、今後も全国の需要電力量は年2%程度のペースで縮小していく可能性が大きい。減少のペースが落ちたとしても年率1パーセント減が2030年まで続けば、2013年から17パーセント需要が減ることになる。(1)で示したように経済成長がこれから奇跡的回復を遂げなければ、2030年の電力需要はさらに低く抑えられる可能性がある。

電力需要はピークが低くなる傾向があり、ピーク時に必要な発電設備容量が減る。これは新電力による離脱や自家発(電力の自家消費分)も影響している。(今年の夏場対策に関する経済産業省の資料にもそのことが触れられている)

利用部門別の電力消費量の推移と実質GDP

出典:資源エネルギー庁

資源エネルギー庁は電力の利用部門ごと具体的な省エネ対策を挙げながら削減可能量を算定している。
業務部門では省エネ対策によって875億kWhの電力量を削減できる見込みだ。空調・給湯・断熱対策で190億kWh、LED照明の導入で229億kWh、複写機をはじめオフィス機器の性能向上で278億kWh、ビル向けエネルギー管理システムの活用などで178億kWhの削減が可能になるとしている。

同様の省エネ対策によって家庭部門でも558億kWh、産業部門では427億kWhを削減することができる。一方で運輸部門だけは2030年に向けて電力消費量が増えていく。しかし2030年に電気自動車や燃料電池車によって電力消費量が100億kWh増加することが想定されているのに対して、鉄道を中心とした省エネ対策が
62kWhの消費減をもたらすため、その影響は38億kWhの増加に留まる。

上記を補足する事柄としては
・内閣府の平成25年度報告では、LED照明の普及率について2013年におけるLED照明普及率は23%であるのに対し、2020年には100%を達成することを目標としている。LED電球は白熱電球と比較して消費電力が約5分の1で済む。

エネファームの拡大(都市ガスによる燃料電池)
国の目標は、2030年に累積台数530万台 (全所帯の約10%)。ガス配管のある都市部が中心であるが、そこは人口、世帯数ともに多い。

住宅用あるいは工場用ソーラーの拡大による自家消費分(システムとして自家消費の残りを売電)の増加がそのまま電力会社に対する需要減につながる。
住宅金融支援機構が2013年6月に発表した「住宅取得に係る消費実態調査」によると、一戸建てを購入した世帯のうち、23.3%が太陽光発電を導入している。最近、その割合はさらに増えている。

人口や世帯数の減少とともに一世帯あたりの電力消費量が頭打ちとなって下がり始めている。特に原発停止や再生可能エネルギーによる電気の買取費用の負担により、電気料金が値上がりした影響が節電に拍車をかけている。


出典:「原子力・エネルギー」図面集2015 1-2-13

電力消費量は産業の隆盛、豊かな生活のバロメーターとされてきたが、地球環境問題、資源問題に突き当たって、人々はいかに少ない資源の消費や温暖化ガス抑制をしながら産業や生活を成り立たせるかの視点に立つように考え方が変わってきた。これが電力需要の減少傾向の背景にあると見る。
今後とも経済成長や省エネ、再生可能エネルギーの進捗状況を注視し、「長期エネルギー需給見通し」(エネルギーミックス)の見直しに備える必要がある。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter