日本エネルギー会議

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電源構成の見直し(3)

エッセイ801では現在の「長期エネルギー需給見通し」に使った条件を見直すべきだとし、エッセイ806「長期エネルギー需給見通し」(2)では、経済成長見通しや需要減少予測について情報を追加した。今回は各電源の発電コストについてさらなる疑問点を挙げる。

1.
需給見通しは3年毎に見直されるが、その際、いつの時点の発電コストを取るかが問題。その時点では早すぎるのではないか。到達点である2030年あるいは、それまでの間でのコストで考えるべきではないか。

2.
原発の発電コストについて「事故リスク費用」は福島第一事故の損害費用は12.2兆円と見て計算されている。その中の賠償額は5兆4000億とされてきたが、今年上期ですでに6兆5600億円になっている。国や県が肩代わりしている分をどう評価するかの問題もある。凍土壁の345億円のように国負担にしてしまったものもある。

3.
「高レベル廃棄物処分費用」の0.04円/kWhは国土の狭いこと、人口密度からすれば、米国の0.1円/kWhよりさらに高いと考えるのが当然ではないか。使用済みのМОX燃料の再処理と処分費用はまだ入れていない。このまま原発を使い続け、新増設までした場合は、六ヶ所の再処理工場では間に合わないが、新たな工場の費用は考慮しないのか。

4.
全国の原発の「追加安全対策費」も実際には約2倍の対策費を使っており、反映させる必要がある。「追加安全対策費」は601億円/基で0.6円/kWhと計算されているが、これは実績に合わせて増額する必要性がある

5.
新設原発が既存のサイトに増設される場合には、防潮堤やテロ対策の安全設備などは共通のものが使えるので安くなる可能性があるとする意見があるが、既存のサイトにすんなり増設できる余地のあるものは少ない。

6.
福島第一原発の事故による廃炉や除染(中間貯蔵施設建設を含む)の当初計画は遅れが明らかで計画の見直しがされている。これに伴い必要とする金額も増えることが決定的である。タンクに溜まったトリチウム水を一番コストの安い海洋放出で処分出来たとしても18億〜34億円かかる。汚染土壌の入ったフレコンバッグは中間貯蔵建設の目処が立たないため、田畑に仮置きされているが1反歩毎年15万円が地主に支払い続けられる。これらは原発のコストに反映される必要がある。中間貯蔵であるとの説明を受けている福島県民にとっては誠に遺憾なことに、この廃棄物の最終処分にかかる費用も計上されていない。

7.
各電源の稼働率をどのような設定するのか。原発や太陽光発電所や風力発電所の実績を調べると、カタログとは大いに異なっている。原発は定期検査による停止など火力発電所なみに70%稼働するとすることは、過去の実績からすれば過大評価になる。自然災害や不祥事など、時とすると政治家の判断で全国一斉に長期間の停止することもわかっている。そのようなことを織り込むべきではないか。コストを計算する際に再処理工場の稼働率を100%にするなど、とうてい納得がいかないものもある。また、風力発電所は落雷に弱く、強度的にも問題があるが、これも20%と理想的な値になっている。

8.
資源エネルギー庁のモデルプラント試算結果では2011年試算と今回試算の比較では、太陽光発電がコストダウンしている以外は全部の電源がコストアップしている。今後の技術開発や普及の程度によって各電源の発電コストは増減する。日本独特の状況はあるが、日本国内だけで考えるべきではない。事業や技術開発のグローバリゼーションからすれば、いずれ日本にも波及することが考えられるため、海外の先行事例を参考にする必要がある。原発は1基4400億円としているが、原子力規制委員会の審査をクリアー出来る原発をその金額で受注しようとする原子炉メーカーやゼネコンなどがいるだろうか。海外で建設中の原発を見れば軒並み建設費が高騰している。建設中のトラブルだけでなく、用地交渉や安全審査が遅れたことによってもコストが増える。これらは発電コストに多大な影響を及ぼす。原子力規制委員会はたえず海外の動向を注視して、最新の安全設計を規制に取り入れることにしており、これは追加投資が今回だけでは済まないことを意味している。発電コストの予想にはこの要素を加えるべきである。

9.
巨額な電源開発促進税の70%が原発に使われているが、これを発電コストに反映させるべきではないか。(残りは石炭火力発電や水力発電に使われている)

10.
再生可能エネルギーについては、国内外での実績が出ており、将来のコスト逓減予測も修正されるべきである。下表は今回使われた太陽光発電コストの見通しであるが、現実には2016年度の単価は10キロワット以上が24円、10キロワット未満が31~33円と決まっている。前者は既に最終目標に近づきつつあり、さらに下がる可能性がある。

火力発電についても輸入燃料の価格見通しに加えて高効率の発電所がどの程度造られ、旧式火力が廃止されるかによってコスト計算は大きく違ってくるのではないか。

11.
発電設備ではないが、蓄電池や送電線建設費などについても2030年までの間にそのコストがどのように増減するかを見極める必要がある。何故ならば、不安定な太陽光発電や風力発電を安定的に使うためのコストであり、これを勘案せず単に発電端での発電コストを云々しても意味はないからだ。
一方、蓄電池などの整備により火力発電が不安定な太陽光発電などのバックアップをしないでもよいとなれば、火力発電は適正な設備容量に抑えて稼働率を現在見込んでいるものより30%程度上げることで、発電コストを低く出来る可能性がある。

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