日本エネルギー会議

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今、そこにある危機

この写真は2002年の台風21号で倒壊した東京電力の香取線の鉄塔だ。東京工芸大学の調査報告書によれば鉄塔は1972年に建設され、風速60メートルまで耐えられる設計だった。当時風速40メートルから50メートルで1基の基礎が持ち上がり倒壊。それに伴って前後の鉄塔も倒壊した。

今年の夏から秋にかけて連続してフィリッピンから日本に近い海で台風が発生。日本各地に主に豪雨による大きな被害をもたらした。そのうちのいくつかはスーパー台風として台湾や中国本土を襲い、その強風は風速80メートルを超し、報じられた映像を観てこれが日本に来ていたらと背筋が寒くなった。

台風がこのようにスーパーなものになった原因は、温暖化により海水の温度が陸地近くでも上昇したためであり、人工衛星からの海水温度の観測結果は我々にそのことを認識させるのに十分である。この傾向はすでに何年も前から起きており、今後ますます酷くなると予想されている。そうなれば例え設計通りの強度を持った鉄塔であっても損壊することは間違いない。

2002年の台風でも明らかなように、送電鉄塔の倒壊が起きれば大規模な停電が長期にわたって発生する。送電線の建設費はキロあたり数億円から10億円、建設には最低数年かかる。

最近は台風の上陸が九州四国や東海だけでなく、東北や北海道にも起きるようになったため、各地で送電鉄塔の倒壊による大停電の可能性が高まっている。内陸部では過去の記録にないような大雨により、山崩れが頻繁に起きている。送電鉄塔は山間部を縫うように尾根沿いに建てられており、いつ山崩れの被害に遭うかわからない。

送電網はこのような事態に備えて首都圏の周りをループ状に囲んでいるが、より深刻なのは送電ストップとともに火力発電所や原発が自動的に発電を停止せざるを得ないことである。特に原発は停止中に外部より電気を送ってもらい冷却をしているため、送電線に異常が生ずれば直ちに所内の非常用ディーゼル発電機を起動しなくてはならない。火力発電所や原発が地震や津波に耐えたとしても発電所の近くの送電線に問題が起きれば、電源としての役割が果たせない状態が長く続くことになる。こうした電源は最近大型化しており、その影響は大きく他電力からの支援があっても供給に支障が出る可能性が強い。

台風が去ったあと、長期にわたって電気が使えなければ人々の暮らしや産業に大打撃となる。現代は電気がなければ生活が成り立たず、大量の避難者、移住者が出ると考えられる。福島第一原発の事故の反省から新基準が出来、それに適合するような努力が電力会社で続けられているが、今、そこにある危機はスーパー台風による送電鉄塔の倒壊によって引き起こされるであろう送電線損壊による長期の大規模停電の方である。

全国の送電線の大風、大雨対策こそが、国があらゆる資源を投入して最優先で行わなくてはならないことなのだ。送電線工事のための高所、高圧下の特殊技能を持つ作業者の確保、ドローンやロボットによる点検・施工の試みなどどの程度行われているのだろうか。

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