日本エネルギー会議

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日本人は何故原発が嫌いなのか(4)

アンケート調査によると日本人の多くが原発に否定的だ。この傾向は原発導入の初期を除いてずっと以前からあったが、福島第一原発の事故以降は世論として固定化しつつある。前回に引き続き、各理由についてさらに詳細に内容を検討するとともに、どのようなかたちで原発嫌い、原発拒否につながっているか、そして他の理由にどのように影響しているかを分析する。

3.イデオロギー闘争の影響、体制批判との重なり
戦後の冷戦が続く中で、保守政権によって国策として原発が導入された経緯から、革新側の政治団体は原発の早急な開発には常に異議を唱え、国の原発政策を政権への批判材料としてきた。革新勢力は原発建設に反対する地域住民、漁業者、同調者などを支援することで原発反対運動を盛り上げ、彼らを革新勢力に取り込み勢力の拡大を図った。既に革新勢力である都会の人々などに対しては、原発反対の立場を採るよう働きかけた。これは公害問題、食品安全問題、医療薬禍問題、人権問題、基地問題などと同じ構図である。

原発の問題点は、多層構造の請負体制のもと大資本に収奪される下請企業、被曝しながら使い捨てされる労働者、献金を受け大企業のために推進に動く政党や政治家、事故や風評により影響を受ける農家や漁業者の悩みなど、さまざまなかたちで人々に提起された。社会の弱者側に立つことを原則としているメディアはこうした革新勢力の訴えを取り上げ続けた。学者、識者、文化人などは原発に批判的な言行をすることでその存在を目立たせ、芸能人に至っては反原発を口にすることを一種のファッションにした。

革新勢力の主張は原発の危険性やデメリットに焦点が当てられ、メリットや必要性について触れられることは少ない。推進側がさかんに主張している必要性や長所は眉唾ものだ、あるいは知らされない短所があると攻撃した。革新勢力が一貫して主張してきた反原発の根拠は次のようなものだ。

・原発推進は国民のためにではなく、電力会社やメーカーなど原子力産業界のためである。推進にあたっては「札束で顔を叩くようなやり方」が取られ、政治家や地元に大きな利権となっている。この手法はメディアにも使われ大手広告代理店などに巨額の広告費が支出され、ソフトタッチで原発の必要性やメリットを浸透させている。こうした経費は最終的には電力料金で消費者の負担となっている。
・原発が日本に必要だと関係者は言っているが、それは原子力村の人々の研究や仕事を続けるため、原子力産業のみならず金融業界も含め大企業が利益を独占するためだ。政府や電力会社が原発に巨額の資金を投じることで、再生可能エネルギーなどの開発に金がまわらなくしている。
・高レベル放射性廃棄物の最終処分問題などを先送りし、いつまでたっても見通しが立っていない。廃炉や再処理、最終処分はいくら掛かるか分からず、原発の発電コストは国や電力会社の示しているように安くはない。半減期が何万年もある放射性廃棄物を溜め込むことで、次の世代に負の遺産をつくり続けている。国と原子力産業によるこうした先送りと操作により国民は騙され続けてきた。
・核燃料サイクルは完成していないのに、原発の運転だけは続けており、危険なプルトニウムが増え続けている。
・電力会社などでは社員を一生面倒みることで社畜化し、社内あるいは業界内から批判が出ないようにしている。そのためもあって事故やトラブルはいくつも隠蔽されてきた。自治体や労働組合でさえ抱え込まれ、もの言えぬ雰囲気になっている。
・多層構造の請負体制を採ることで、被曝を伴う仕事や危険で辛い仕事は下請けに安くやらせている。ここでもメーカーや電力会社の子会社による系列化で締めつけが行われ情報が管理されている。
・日本は唯一の原爆被曝国ではあるが、原発は密かに原爆とセットで政治的に日本に導入されたのであり、平和利用という仮面を被ってはいるが、原爆の材料であるプルトニウムを確保し、原爆製造技術の維持をはかっている。
・福島第一原発の事故後、大幅な改善が行われ安全性が高まったというが今までそれをやらなかった原子力の関係者が引き続き原発の運営をするのでは
信用出来ない。事故後もあいかわらず原発の復権が保守政権と電力会社などにより画策されており、その体質は変わっていない。
・地方にとって原発は東京など大都市のための電源であり、危険の押し付けである。雇用は思ったほどではなく巨額の交付金も地元のためになる使われ方をしていない。

革新勢力がこうした主張を何十年と繰り返し、それをメディアが取り上げたことで、推進側が地道に広報活動を展開しても挽回は困難であった。なによりも革新勢力が主張すること、例えば事故トラブルや不祥事などがしばしば起きることで、その主張が裏付けられてしまうことはいかんともしがたいことであった。(順調に運転していることはニュースにはならない)

その結果、選挙では原発が争点とはならないこともあって、国も地方も保守が勝つにもかかわらず、原発に関しては国民が嫌うという状況が生まれている。 

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