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今月7日、トヨタ自動車が2020年までに電気自動車(EV)の量産体制を整え、EV市場に本格参入するというニュースが流れた。従来EV路線は日産と三菱自動車が追い求め、トヨタはハイブリッドカーで市場を席巻し将来は水素自動車だとはやばやとミライを発売した。しかし、ここにきてトヨタもEVに参入すると宣言することで路線変更を打ち出した。

トップメーカーのメンツを捨ててまでの方針変更の裏には、蓄電池の性能向上、価格の低廉化が進んだことでEVの最大の弱点であった航続距離の問題に見通しがつくとともに、各国の環境規制や補助金制度が変わりつつあるため世界の自動車メーカーが一斉にEV開発を本格化した事がある。

より注目すべきは電力需給面での影響だ。EVの普及は電力需要を押し上げると予想されるが、供給面では何百万台と生産される車に蓄電池が搭載されることで、「集積回路におけるムーアの法則」的に蓄電池の価格引き下げと性能向上を実現する可能性がある。

蓄電池は電気を使用するあらゆる場面で使われ、電気の特徴である「貯めることが出来ない」という欠点を補う。特に間欠的な発電しか出来ない再生可能エネルギーを安定的に使うためには欠かせないものだ。分散する大量の蓄電池は新たな電源の誕生とも言え、社会のエネルギーインフラの大変革を招くことになる。

アメリカのEVベンチャーテスラモータースのイーロン・マスクCEОは、早くからこのことに気づいて、大衆車のEV(一回の充電で500キロ走れる。車体価格300万円、燃料代(この場合電気代)はガソリン車の10分の1)を発売すると同時に、大規模な蓄電池生産工場をネバダ州に建設し、家庭用蓄電池を破格の価格で売り出した。日本メーカーの家庭用蓄電池が100万円台なのに対して、テスラのパワーウォールⅡという壁取り付け方の蓄電池は10キロワットモデルで3500ドル(約42万円)、7キロワットモデルで3000ドル(約36万円)。日本でもウェブで販売予約を始めた。

また最近、パワーパックという企業用の数百キロワット級の蓄電池システムも出荷すると発表。アメリカでは、温暖化ガス削減の観点から大企業が自社の施設に太陽光発電設備を導入する動きが進んでいるが、こうした動きに対応したものと思われる。日本やドイツでは廃車したEVの蓄電池を家庭用に使う試みが始まっている。日産はリーフの中古蓄電池を回収して家庭で再利用するビジネスを子会社で進めている。電気自動車が毎年何10万台も廃車されるような時代になれば、資源の有効活用の観点からも必要なことだ。

この状況は通信の世界でモバイル端末が瞬く間に固定電話を駆逐してしまい、途上国では固定電話時代をパスしていきなりモバイルが普及したことを思い起こさせる。多くの人は高性能で安価な蓄電池などなかなか実現しないと考えていたが、それはもう間近に迫っているようだ。

現在、人口減少、省エネ、景気の足踏みによって電力販売量は年々減少しているが、電力会社が自由化で他電力や新電力に顧客を取られる以外に、自家発・蓄電池によっても販売量を減らされるという厳しい局面を迎える可能性がある。一方、安い時に電気を買いまくって蓄電し、高くなった時に売って稼ぐという冷凍倉庫のようなビジネス、あるいは保険会社のように非常用の電力のみを保証するというビジネスが出現する日が来るかもしれない。

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