日本エネルギー会議

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手痛い修正

先週、メディアは一斉に福島第一原子力発電所事故の費用見通しがわずか3年で11兆円から21兆5千億円へ倍増したことを報じた。中でも従来2兆円と見積もられていた廃炉・汚染水対策の費用が、格納容器の底部に溶け落ちたデブリの取り出しに前例のない難しさがあることが分かってきたことを理由に8兆円と当初の4倍に膨れ上がったことに焦点が当てられている。

福島第一原発の事故以降、いかに人々の信頼を取り付けるかに日夜腐心している原子力関係者にとって、このような大幅な修正は最も手痛いものである。想えば原子力開発の歴史はいかに人々に新しい技術を信頼してもらうかの闘いの歴史であるとともに、積み上げた信頼を事故や不祥事などで一気に失ってしまう歴史でもあった。

電力自由化が進む中、国と原発を抱える電力会社は1日も早い再稼働を目指しており、そのためには原子力の必要性すなわち安価で安定、環境にも良いことをアッピールしなければならないタイミングに今回のような大幅な修正が入ると、人々は当初の見通しが甘かったのではないかと疑問を持つ。
事故直後、国は福島第一原発の事故対応の費用が高額に上ることが分かれば、廃炉費用を分担する各電力会社の説得が難しくなると考えたのではないか。

また、当初の見積もりの低さは、エネルギー基本計画において原発を重要なベースロードに位置づけるための意図的なものではなかったかと人々は考えてしまう。あまりの巨額な費用を明らかにすると東京電力を破綻させずにおくことが難しいと考えたのでないかと勘ぐりたくなる。
世耕経産大臣が「今後も費用が増大しそうだ」と仄めかしたのは、間違いなく増大するということ人々が感じることで次のショックをへらそうとしたのだろう。あいかわらずの姑息なやり方だ。大臣の記者会見を見て、政治家とはなんと面の皮の厚い人間かと思ったが、その表情には気まずさが隠しようもなく現れていたのを私は見逃さなかった。

原発の安全性について福島第一原発の事故は当事者たちに対する人々の信頼感を打ち砕いてしまった。それを回復させなくてはならない時に、再び手練手管を尽くして過小に見せかけ、ショックを分散したり、先送りしたりするのは信頼という点でまったくの逆効果で、反対派に格好の攻撃材料を与えるものだ。欺瞞、先送り、開き直りなどを感じさせるこうした原子力行政のやり方こそ、我が国の原子力開発の最大の障害物である。

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