日本エネルギー会議

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知りたい排気筒の現状

福島県民、特に避難解除となり帰還を果たした住民やこれから帰還しようとしている住民が一番気にしていることは、福島第一原発がこれからの廃炉工事中に安全な状態を維持出来るのかということだ。帰還しても、再び避難しなくてはならなくなることはないのか、安全に暮らせるというのならその根拠を知りたいと思っている。
だが、廃炉がはじまってからの5年間に構内の停電、汚染水を入れたタンクや配管からの漏洩、解体に伴う放射性の粉塵の飛散、モニタリング用計測器の不調などいくつかの事故トラブルが発生し、これを耳にした住民はその都度不安を感じた。
 東京電力は福島第一原発構内の瓦礫の片付けや除染が進み、ほとんどの区域で一般的な作業服でマスクをつけずに作業が出来るようになったとしているが、東日本大震災の余震や台風などがくる度に心配になるのが排気筒の健全性だ。構内には4本の鉄塔が立っているが、特に損傷が目立つのが1、2号機の間にある排気筒(高さ約120メートル)で、2013年には構造物の一部に亀裂が入っているのが確認されている。
 東京電力が超望遠カメラで撮影したところ、排気筒のほぼ真ん中の高さ付近で、排気塔を支える骨組み接合部など約十カ所で破断や変形が見つかっている。また、事故発生当初に炉内の汚染蒸気を逃がすベントが実施されたことにより、排気筒内部や配管内は高濃度に汚染されている。
 排気筒は建設されてから30年以上たち、今も潮風に晒されているが、定期的な再塗装や補修も事故後は行われていない。また、東日本大震災とその余震も受け続けている。このことを赤旗紙が報じたのが2015年の2月。東京電力は上半分だけを撤去するとし、現在工法や専用の重機の開発をしている。昨年4月に、東京電力は2018年解体開始、2019年度解体終了と発表し、解体計画を原子力規制委員会に示した。その後の動きは伝えられていない。
 構内停電や汚染水の漏洩を見ても東京電力は対策が後手に回る傾向がある。排気塔を支える構造物の一部が落下する可能性は日に日に高まっている。少なくとも解体工事が終了するまで、落下物が作業員を直撃する恐れのある範囲を明らかにし、排気筒周辺を十分に広く立ち入り禁止とするべきだ。また、解体終了までに万一倒壊した場合には、どの程度の放射性物質が周囲に飛散するかのシミュレーションも行い、関係自治体などに伝えておくべきだ。
これ以上損傷が大きくなれば解体そのものも危険になる。福島県のいわき市や茨城県北部の太平洋岸では「鮟鱇」(アンコウ)を使った「あんこう鍋」が冬の名物だが、その柔らかな魚体を解体する際に「吊るし切り」といって頭に鈎を刺して架台から鮟鱇をぶら下げておいて切る。排気筒も頂部をクレーンで吊って、あんこうの吊るし切りのような方法で解体しなくてはならなくなる可能性がある。

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