日本エネルギー会議

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いずれ問題になること

東芝経営危機は2015年にウェスチングハウスを通じて買収した原発関連の建設・サービス会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター社の原発建設事業のコストが大幅に増加することが明らかになったことに起因する。
 フランスの大手原子炉メーカーのアレバはフィンランドで建設しているオルオキト原発(EPR)での10年にも及ぶ完成遅延、フランスで建設しているフラマンビル原発(EPR)での6年間の工期遅延。それにイギリスで建設予定しているヒンクリーポイント原発の費用見積りの上昇により経営危機に陥ってフランス政府の支援を仰いでいる。これらの問題の背景には規制基準の厳格化、建設の複雑化、原発建設経験不足があると指摘されている。欧米では原発建設コストが過去20年間で2~3倍に増加したとの報告もある。
 日本では大間原発、東通原発1、島根原発3号機が建設中であり、その進捗率は10~94%と幅があるものの、いずれも新規制基準適合のための審査や追加工事で運転開始が大幅に遅延している。
さらに計画中の原発は7基。東通原発2号炉、浜岡6号機、敦賀3号機、4号機、上関1号機、2号機、川内3号機などだ。この中には敦賀3、4号機のように着工寸前のものもある。これらについても着工するには新基準をクリアーすることが求められ、地元了解が得られたとしてもさらなる着工遅延が見込まれる。建設が開始されていなくても、いままでの準備工事や設計などの費用は相当な額に達している。 
 日本各地でこれから建設する原発において費用の増加は免れない。しかし、建設中あるいは建設準備中の原発の費用は財務諸表では「建設仮勘定」に入っていて電力会社の決算からは読み取ることは難しく、損益にも反映されにくい。これだけ運転開始が遅れれば、すでに予定している発電単価は大幅に上昇しているものと思われる。このままでは運転開始したとしても当初計画していたような安い電源にはなりえない。
 電力の完全自由化が迫る中、建設中の原発が運転開始しても電力会社の収支改善には貢献するどころか、膨大な償却によって足を引っ張りかねないが、予定発電単価がどのような推移をたどっているかは社内でもあまり知られていない。開けてびっくりの結果に電力会社が国にエネルギー安全保障対策として、あるいは温暖化対策として財政的な支援を求めるようなことがあれば大変だ。
 福島第一原発の事故後に東北電力は福島県浪江町に建設を計画していた浪江小高原発1号機の建設を中止。先頃、その用地はすべて浪江町に無償譲渡され震災からの復興に活かされることになった。東北電力は用地買収などにかかった約180億円を年度決算で特別損失として処理した。まだ着工していない原発でもこれだけの損失となる。福島県による脱原発宣言が中止判断の直接のきっかけではあったが発電単価面でも建設に踏み切るには問題があったはずだ。
現在、建設中あるいは建設準備中の原発について、政府の方針や電事連の縛りにより、電力会社は建設中止あるいは見送りをしたくても出来ない状況になっている。そうしている間にも、建設準備体制維持のための費用は刻々と積み上がっている。このままでは、いずれそれが電力会社の経営危機につながる。

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