日本エネルギー会議

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さらなる5年

 6日付の新聞によれば、福島第一原発の事故による避難区域のうち、最も放射線レベルが高い帰還困難区域は、この春から国が費用負担をして一部分を重点的に除染し帰還困難区域の復興拠点にするが、その面積は帰還困難区域のわずかに5パーセント。この事業は5年間かけて行われる予定だが、今から5年後にも帰還困難区域の95パーセントは、今のままで手つかずということだ。
 手つかずというのは、少々オーバーかもしれない。というのはプラスの変化として帰還困難区域でも水道や下水の復旧はさかんに行われており、マイナスの変化として大量のフレコンバッグが積まれた土地が大きな面積を占めるようになっているからだ。そして放射能汚染レベルも少しづつ下がっている。
 私の家も帰還困難区域に入っているが、許可を得て一時立ち入りする際には6号国道からゲートを開けてもらう必要がある。区域内は以前からの県道や町道があり、舗装はところどころ壊れているが車は通れる。避難先から一時的に戻って家の手入れや草刈をしている様子はまったくない。
 蔦が繁殖して庭木を枯らしている。各家には自動車が方々に錆びたまま、窓ガラスが割れたままに6年間も放置されたままだ。道路は両側からススキが伸びて車線を狭くしている。建物の外観は保っているが、家の中はどうなっているかはわからない。動物や昆虫が侵入したり、壊れたところから雨風が入ってさらに壊れているはずだ。設備などは完全に錆びて再使用は不可能だ。
 ここに住んでいた人々は、新しい家を別の場所に建てて住んでいるか復興住宅に入っているが、誰も元住んでいた自分の家を修理しようともしない。復興庁のアンケートでは約60%が「戻らない」と答え、残りは「判断がつかない」、「戻りたい」としているが、本音はほぼ100%が「戻らない、戻れない」だろう。富岡町の町は不動産バンクを作って帰還しない人の家や土地を欲しい人に売ったり貸したりする事業を今年から始めると言っているが、解除されない帰還困難区域は対象外だ。 
 帰還困難区域では、どの家も誰も住んでおらず、取り壊しもされずに荒れ放題となる。持ち主は売ることも貸すことも、壊すことさえできずにいる。これが今から5年後、つまり福島第一原発の事故から10年後の姿となるだろう。そのなかで復興拠点の5パーセントだけが人の気配がするというのは不気味だ。国は帰還困難区域を「どんなに年月がかかっても復興する」と言ってきたが、それは「期限を決めて復興させる気はない」という意味かもしれない。

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