日本エネルギー会議

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避難計画の難しさ

 茨城県の東海村は村内にある日本原電の東海第二原発で事故が発生した際の避難計画策定状況の住民説明会を今月初旬に開催した。報道によれば、避難先に決まっているつくばみらい、取手、守谷の3市と今月末に協定を結ぶこと、平日昼間に事故が起きた際、車で避難できない人のために最大300台の大型バスが確保できることなどが報告され、新年度に避難訓練も行うとのことだ。
 説明会への参加者が約40人と少ないのが気になるが、(東海村の人口は3万8千人)村は避難する際の流れや、前回の説明会で寄せられた質問への回答を説明した。避難計画では、地震で道路が使用できないなどの複合災害を想定していないことに住民から疑問の声が上がったが、村は主な避難経路の常磐道と国道6号が使用できないケースを想定した代替ルートを検討するとした。
 原発が過酷事故を起こす原因、あるいは引き金として大地震、大津波など自然災害が考えられ、複合災害を想定していないことに住民が疑問を持つのは当然だ。しかし、複合災害まで考慮することになれば、村当局の手に余るため県や国が計画づくりに主導的な役割をしなくてはならない。これは東海村だけではなく全国の原発立地自治体にも言えることだ。
 東海第二はおそらく国内で最も避難計画が作りにくい原発だ。世界でも台湾の原発に次いで難しいだろう。近くに27万人の水戸市など30キロ圏内に100万人が暮らすなど条件が極めて悪い。原発から5キロ圏内の約4万人は即避難だが、マイカーによらない場合はバスが必要だ。バスの確保が報告されたとしているが、300台のバスは常時村内にいるわけではなく、原発事故発生時には広く県内に分散しているはずだ。
 運転手が乗って東海村に向かわねばならない。運転手には被ばくすることも含め、事前に労働条件や補償について本人や労働組合と何らかの取り決めをして置く必要がある。バスや運転手が確保出来ても、道路が走れるかは別問題だ。果たして、後日のニュースでは東海村長は運転手の確保などについて未解決の問題が多いことを認め「住民に理解してもらえる計画にするため、内容を突き詰めていかないといけない」と述べている。
 東京湾に大津波が襲来した際に、江東区などの住民がどのように避難するかスーパーコンピュータを使ってシミュレーションが行われているが、原発事故の避難についてもそうした検討が必要だ。原発の場合、風向風速の変化が避難させる方向に影響するので大地震による大火からの避難に似た複雑さがある。
 また、最近では原発事故の発生情報はSNSでリークし拡散するので、6年前の福島第一原発の事故でも3月11日夜にいち早く逃げ出す人が多かった。翌12日のマイカーやバスによる避難はなんとか出来たが、前日に避難した人がいたおかげでマイカーの台数が少なかったのかもしれない。
 また、避難指示を出す前に30キロ圏内で通行制限をかけることが可能だとは思えない。対策本部が5キロ圏内の住民の避難と30キロ圏内の自宅待機を指示する時刻には、周辺道路は既に渋滞ということも考えないといけない。地域全体の大量避難は机上で考えているようなもの、あるいは訓練で経験するとおりのものではない。これから避難計画をブラシュアップする予定の東海村当局は、全住民避難の実績のある福島第一原発周辺の避難の細かい実態をもう一度よく調査し教訓にすべきだ。

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