日本エネルギー会議

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世論の二分化

 イギリスのEU離脱に関する国民投票、アメリカ大統領選挙など国論が二分する現象が世界各地で起きている。アメリカでは移民に仕事を奪われ経済的に困窮した人々が、従来の移民受け入れ政策に批判を強め国論が割れた。
 ヨーロッパにおいては中東の混乱により移民が地中海を渡ってヨーロッパに殺到し社会不安をもたらした。二分化の元は極端な経済格差や社会的混乱に求められる。
 以前はどの国も中間的な集団が大きく占めていて極端な意見は支持されにくかった。しかし、経済的格差の異常な広がりやテロや原発事故のような大惨事あるいはとんでもない不祥事があればそれをきっかけに敵対する二つの集団は、意見を持たない集団を自陣に取り込もうとし始める。
 また、特に意見を持たない人も選挙・投票や事故報道に接すれば、問題について期限を切って自分の意見を決めなければならなくなる。
 二分化は敵対する集団の双方が感情的に煽ることで決定的になる。人々はクローバリゼーションによる倒産や失職に不満と不安を抱き、これによって得をしているものは誰かということを追求し始める。
 敵対する集団は双方とも自分たちの考えたことが最も素晴らしいという自惚れもあり、物事を客観的に見られなくなり、相手方との議論は無駄と思うようになる。情報格差をなくすどころかドナルド・トランプ氏のようにSNSで真実でないことも含め一方的に言いたいことを流し続ける。
 日本では原発を推進するか否かについて国民の意見が二分しており、今は脱原発の意見が多くなっている。従来、日本における原発政策の二分化は社会的混乱や経済格差ではなくイデオロギーと情報格差によるものだった。
 しかし,福島第一原発の事故が起きて実際に大量の避難者が出てコミュニティが破壊された結果、原発事故を起した責任をうやむやにしようとする為政者や電力会社の姿勢などに疑問を抱き、否定的な意見が多くなっている。
 一方、資源小国におけるエネルギー安全保障や温暖化対策としての原発の必要性といったことはいまだ実感を伴って理解されてはいない。もし、天然ガスの輸入が止まり大停電で社会不安が起きれば、その実感から原発推進の世論が再び大きくなるだろうが…。
 経済問題では貧富の格差によって薄くなった中間層を再び厚くする必要が語られている。原発問題についても情報格差を克服し、事実に基づく判断をする人々を増やす努力をしなければ感情的な対立に発展して道を誤るおそれがある。
 「原発が全部止まっても停電しなかったではないか」ではなく、今こそ、現実にエネルギー供給に破綻を来さないようにしながら冷静な議論をし、将来の理想的なエネルギー供給体制の確立に向けて緻密な計画を作らねばならない。
 先日、「福島原発行動隊」という公益社団法人が大阪で集会を開いたが、主催者は「この集会では原発賛成、反対ではなく、万一原発事故が起きた場合にどのようにして被ばくを少なくしたらよいかについて議論することにする」と発言された。
 結論ありきで議論するのではなく、より客観的で正確な事実を知ろうとするこうした姿勢こそが、感情的に世の中を分断されないようにするために一番大切なことである。

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