日本エネルギー会議

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勝手に避難する人たち

 今村復興相が午前の記者会見で、フリーの記者の質問に激高したことがニュースになっている。
 記者が福島第一原発事故による自主避難者への住宅の無償提供が3月末で打ち切られたことに関して、「大臣は福島県の実情をご存じないようだ」「国が責任を取るべきではないか」と執拗に追及したことで「あなたは出て行きなさい」「二度と来ないで」などとまるでトランプ氏のように怒ったが、夕方には大臣も「ちょっと感情的になってしまった」と反省した。
 メディアの取り上げ方はこうしたやりとりと大臣の冷静さを欠いた態度をニュースにしただけで、肝心の中身をスルーしたものが多いように思えた。
 大事なことは自主避難したことを補償や支援でどう扱うかである。国からの避難指示を受けて自分の意思ではなく強制的に避難させられた人たちから見れば、自主避難者は国の指示なしに「勝手に避難した人たち」だ。
 国は区域を設定してその中にいる人たちに区域から出るように指示したのだから、その人たちには慰謝料などを支払う必要がある。しかし、その外側にいた人たちには避難するよう指示したことも勧告したこともない。それでも、国は避難対象としなかった人たちにも慰謝料を東京電力や県に払わせ、かつ自主避難した場合に家賃まで出している。
 この措置は強制的に避難させた人たちへの慰謝料や住宅の無償提供とは違った性格のもので、はっきり区別して考えるべきだ。自分たちが安全を求めて避難した先にもともと住んでいた人が、安全とされた場所から避難して住宅を与えられている事実は強制的に避難させられた人たちの気持ちを踏みにじるものでしかない。
 区域解除一年後には仮設住宅から出され、住宅の無償提供もあと一年で打ち切られるという避難者からは「県による自主避難者への住宅無償提供を続けるのなら、私たちの住宅無償提供をさらに続けるようにするべき」との声が出るのは当たり前である。
 勝手に避難した人たちの救済を税金や電気料金を通じて国民にいつまでも負担をさせてよいものか公平の観点からは大いに疑問だ。自主避難者が不満なのであれば、大臣の言うように国の出した避難指示の区域設定の妥当性について裁判で争うしかない。
 今村大臣の激高に関連し、民進党の金子恵美「次の内閣」復興相はさっそく「逃げ腰の閣僚に福島の復興再生を委ねていいのだろうか」と今村氏を批判し、今後の国会質疑で資質を追及していく考えを示したが、視点がずれている。
 メディアも「大臣の激高」に焦点を当てるのではなく、自主避難者にどの程度まで支援をするのが妥当なのかを正面から論じて欲しい。

(参考)
 今回の事故で、東京電力から避難指示区域以外の福島県内のほとんど住民に避難したかしないかは問わず「慰謝料」として一律1人8万円(子供・妊婦には40万円)が支払われた。原発から遠い白河や会津などの地域で慰謝料が支払われなかった住民に対しては県が1人4万円を支払った。自主避難者もこれに含まれる。
 さらに県は家賃として月6万円を6年間にわたって自主避難者に対して支払ってきており、今年3月に打ち切りとなった。

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