日本エネルギー会議

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誇らしげに語るなかれ

 安倍首相の断定的な発言は、オリンピック招致活動での「福島原発はアンダーコントロール」や「私や妻、事務所も含め、小学校の認可や国有地払い下げには一切関わっていない。関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」が知られているが、「世界で最も厳しい規制基準」もその一つだ。
 原発再稼働に関連して安倍首相は「世界で最も厳しい規制基準」としきりに繰り返すが、当初から「本当にそう言えるのか」という異論が出ている。曰く、「欧州の最新型原発では日本よりも丈夫な二重防護壁を使用している」「欧州ではフィルターベントを標準装備している」「欧州の最新型原発にはコアキャッチャーという受け皿がメルトダウンに備えて原子炉の真下に設置されている」などである。
 原子力規制委員会の田中俊一委員長も「その世界最高水準とか世界最高というのは、やや政治的というか、ま、言葉の問題なんで、具体的ではないんですよね」と記者会見で述べている。日本の原発は「世界で最も厳しい規制基準」で審査されることは原発の過酷事故を経験した日本人の誰もが賛成すると思われるが、何故世界でもっとも厳しい規制基準でなければならないかの根拠はよく考える必要がある。
 安倍首相は国民に原発の再稼働を許容してもらうためには、政府がこれまでの規制基準の甘さを反省し、今後は世界最高の規制基準で審査すると言うのが一番納得を得られやすいと考えているのならそれは違うのではないか。私がそのことに気づいたのは天皇陛下の東日本大震災に関する次の発言を知ったからだ。被災地を訪問されるヘリの中から東北沿岸をご覧になった陛下は「日本の国土は美しい。でもこれがプレートの上に乗っているからね」と言われたと伝わっている。
 原発を建設する国土が世界で最も過酷な自然災害を引き起こす可能性のある場所であれば、規制基準がどこよりも厳しいことは当然の話であるのだ。田中委員長も「私が最高水準にあるというのは、様々な、いわゆる重大事故対策について我が国の場合は特に外的な要因、自然条件が厳しいということを含めて、そういうものに対する対応というのは相当厳しいものを求めているということから最高水準であるということを申し上げてきた」と天皇陛下のお言葉と同じ趣旨のことを記者会見で述べている。
 「世界最高水準」は、世界中が同じ国土の条件であった場合に、そう言っても良いのであって、日本のように自然条件が世界最悪であるところでは、それに耐えうるようにするのが当たり前なのだ。それがいままでそうでなかったのだから、今度見直したからと言って誇らしげに語るようなものではあるまい。
安全の基本は常に謙虚であることではないか。「世界で最も厳しい規制基準」と胸を張ることは、既に一歩後退と知るべきだ。

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