日本エネルギー会議

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ハードな安全対策の限界

 福島第一原発の事故の後、事故予防対策あるいは事故発生時の対応の改善として打ち出されたものはハード対策がほとんどのような印象を受ける。原子力委員の岡芳明氏も「過酷事故に限らず、日本では対策がハード(設備)に偏りがちだが、ソフト(リスクマネジメント、予防型の安全、緊急時対応、防災等)も過酷事故研究開発と共に進める必要がある」と述べている。
 ハード対策は必要なことであり、事故防止に役立つことは間違いないが、ハインリッヒの「災害の5つの駒」(①設備的・環境的欠陥、②管理的欠陥、③不安全状態・行動、④事故、⑤災害)で示されているように、災害に絡む要素の一つに過ぎない。
 注.ハインリッヒは「1:29:300の法則」で有名だが、5つの駒は別物。

 ハード対策偏重の問題点はいろいろある。一番はハード対策をしたことで、ソフト面が疎かになることだ。あれほどの投資をしたので少々のことでは事故は起きないと過信してしまう。いかにも頑丈そうな設備や凝りに凝った装置を見ることやハードを作った側の自信たっぷりの説明で人間の脳はだまされやすい。
 ハードは設計図に基づいて作られており、設計で意図した範囲では対応出来ても、設計で考えなかったことには対応出来ないということを忘れてはならない。また、そのハードもしっかりしたメンテナンスやオペレーションがされてこそ性能を発揮するのであり、不十分なメンテナンスや不適切な操作をすれば役に立たない。福島第一原発の事故で原子炉冷却の命綱ともいうべきICの構造や操作方法を運転員がよく知らなかったため、せっかくの機能が発揮されずに炉心損傷に至ってしまったのはこれである。
 ハードが機能するためには、電気や圧縮空気などが必要な場合が多い。そうなると当該のハードがいくら健在であっても、電源喪失や配管損傷によってせっかくのハードが宝の持ち腐れになる。制御系なども含みトータルの設備が健全でなければならないが、それを維持するのは並大抵のことではない。
 特に重要設備は多重化されているため、そのメンテナンスにかかるコストや手間は幾何級数的に膨大なものとなる。巧妙な装置であればあるほど、内容がブラックボックス化しやすく、電子装置の小さなカード1枚の不具合で巨大な装置がまったく動かないという例も多々ある。
 多重化も同じ場所にあり同じ原理や同じ動力で動くものであれば、本当の意味の多重化にならない。非常用ディーゼル発電機が3台あってもだめだということで浸水の恐れのない高台に移動用の非常用ディーゼル発電機の設置が求められた所以である。このようにハード対策はやりだせばキリがない。経済性を考えてハードでどこまでやるのか、ソフトに頼る部分はどこかを明確にしていくことが求められる。

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