日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

国による放射性廃棄物の仮置き

 福島県内のあちらこちらに見られる大きなフレコンバッグと呼ばれる黒い袋。中身は県内全域の除染作業によって発生した放射性物質を含んだ土や砂、草、木の枝などだ。環境省はこれらの廃棄物を大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に搬入する計画だが、地権者との交渉が遅れ十分な土地が確保出来ていない。そのため、県内各地に仮置き場を造りフレコンバッグを仮置きしている。
 私がかつて暮らしていた富岡町内においても仮置き場が何箇所も造られ、国道6号線から帰還困難区域内にある自宅に至る道路沿いにもいたるところにフレコンバッグが積まれている。仮置き場がいっぱいになると全体をシートで覆い、周囲は網フェンスが立てられ立ち入りが禁止され、基地のような様相を呈している。
 その仮置き場の範囲が徐々に自宅近くに迫ってきたため、県や町に状況や対応を尋ねたが「除染は自治体でも一部やっているが、仮置きについては環境省の管轄」と、にべもない。「何か環境省から聞いていないのか」と再度尋ねても「何も聞いていない」だった。
 やむなく環境省の現地事務所に「仮置きはどのように進めたのか」を聞いたところ次のようなことがわかった。

・事故から3年後の平成26年5月に仮置きに関して行政地区毎に説明会を実施した。出席を要請したのは候補地の地権者と仮置き地境界から50メートル以内の住民のみ。50メートルと100メートルのケースがあるようだが、何故50メートルにしたかは不明。行政区長が同席した。

・対象となった人で説明会に欠席した人には後日電話で内容を伝えた。

・環境省は町の同席は求めていないが、その時は町役場職員が同席していた。

・土地の確保は一斉に行われたが、造成や仮置きは徐々に行われている。

・仮置き期間は3年間。昨年期限が来たので、さらに3年間の延長をすることとして地権者の同意を取り、そのことを区長には説明している。

・避難区域指定解除が行われるまでに、仮置きしたフレコンバッグを中間貯蔵施設に搬出するという約束はない。

 要するにごく限られた関係者、それも使用価値のない土地で多額の借地料を得られる地権者と、わずか50メートルの範囲の住民の了承だけで仮置き場の設置や期間を決めたということだ。現在、区の住民は県の内外に散らばって避難生活あるいは移住をしており、行政区長が行政区の総会を開いて説明を出来る状況ではない。
 さらに昨年行政区長が交代したが、それから会合は一度しか開かれていないし、環境省や区長から住民に対して、仮置き場のことも含めて電話や郵便による情報も一切ない。町役場は職員が同席したというが、これまた住民に情報を流していない。
 全国どこでも街中に大規模なゴミ捨て場を設置するとなれば、住民に対する説明会や現地の視察が行われるのが当たり前だが、避難区域ではそれが行われないまま、ごく限られた関係者の間で話し合いがされ実行に移されている。環境省は中間貯蔵施設が思うようにならない中、情報を出さずに実に姑息なやり方で放射性廃棄物の仮置きを進めている。
 県や町は本来、住民の権利を守る立場にあるはずだが、環境省のやることには一切手を出さないと逃げ腰だ。地権者とそれ以外の住民の間に板挟みになることを恐れてのことと思われる。仮置き場が造れなければ、除染や区域解除が進まないことはそのとおりである。住民も苦渋の決断でそれを受け入れなくてはならないと考えている人が大半だ。
 だからといって一般住民に対して環境省からは何も情報をいれず、意見も聞かずに放射性廃棄物の山を勝手に造り続け、帰還困難区域を実質的に中間貯蔵施設化してよいものではない。 

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter