日本エネルギー会議

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悲観的過ぎる内容

 5月17日付電気新聞のウェーブ欄に「二つの選択」と題する地球環境産業技術機構理事長の茅陽一先生のエッセイが掲載された。内容をかいつまんで紹介すると、

①日本政府は2050年までに二酸化炭素排出を80パーセント削減したいとしているが、環境省と経産省で見通しに差があり、経産省は日本が海外で削減する分を入れないと達成出来ないとしている。

②原子力の大幅拡大は無理。

③再生可能エネルギーは出力不安定で電力に慣性なし。再生可能エネルギーの出力変動吸収のために蓄電池をつければコストが増大する。

④火力発電に50パーセント依存するが二酸化炭素貯留年間2億トンは技術・コスト・パブリックアクセプタンスで困難。

⑤結論として80パーセントなどという目標は降ろして、もっと確実な目標に切り替えるべきだ。 

その道の泰斗のご指摘はもっともだと思う一方、少し悲観的過ぎるのではないかとも感じた。

・省エネは「乾いた雑巾」説もあるが、まだまだ出来ることがたくさんあるのではないか。企業や家庭で省エネ対象となる建物、照明、家電など身近に数多く見ることが出来る。(お宅の照明は全部LEDですか?)

・再生可能エネルギーの弱点として指摘されているのが出力の不安定さ、慣性のない電力であること。短期的変動に対しては売電先の電力会社が変動対策を接続条件としたところでは、電力の買い取れ価格が下がったにもかかわらず蓄電池を併設したメガソーラーが商業ベースで次々と建設されている。長期的変動に対しては揚水式ダムのかさ上げが考えられるほか、再生可能エネルギーの電力で空気をタンクに圧縮貯蔵し、その空気で再び発電する空圧電池も実証実験の段階にある。(エッセイ916 意外な本命で紹介済) むろんNAS電池(ナトリウム硫黄電池)などもある。

・北海道・東北の風力発電、日照時間の長い地域の太陽光発電、各地の地熱発電など再生可能エネルギーのポテンシャルは国内にもかなりある。これを引き出そうという取り組みが地域で年々盛んになっている。

・再生可能エネルギーの生産の場と消費の場が離れすぎていることに対しては、
福島県で製造した水素を貯蔵し、東京オリンピック会場への輸送することが計画されている。この例では水素をタンクローリーで首都圏に運ぶことが想定されているが、各地の水素製造場所で貯蔵し、必要な時に再び電気に変えて送電線で消費地に送ることで揚水式ダムと同じような水素タンクの使い方が出来るのではないか。ただし、「電気⇒圧縮空気⇒電気」や「電気⇒水素⇒電気」のプロセスでどの程度エネルギーが失われるか見極める必要がある。(揚水式ダムでは30パーセントが失われる)

・水素のまま消費地に送られた場合は、経済産業省の「水素・燃料電池ロードマップ」のようにエネファームや業務用燃料電池で使うことになる。先月、トヨタ自動車が燃料電池とマイクロガスタービンを組み合わせたハイブリッド発電システムの実証を開始した。発電効率は55%、熱電供給も入れると総合効率は65%になるという。また、パナソニックは水素による燃料電池開発に関して世界のトップランナーだ。

・再生可能エネルギーによる発電コストが火力発電と比較して高く、これに蓄電池のコストが加わればさらに経済性がなくなる。しかし、再生可能エネルギーや蓄電池のコストは年々下がり続けており、先進諸国が達成したコストを見れば、日本でも下がる余地がまだ十分にあると考えられる。現に風力発電の建設コストを下げるために超大型クレーンを使わずに、高層ビルのせり上がり方式を活用した建設方法が試みられ約2割コストダウンが出来たという。蓄電池も目下、電気自動車のために容量拡大とコストについて熾烈な開発競争が世界中で行われている。
・貯留による二酸化炭素対策は先生御指摘のとおり再生可能エネルギーの場合より実現は困難だと思われ、あまり期待はかけられないのではないか。石炭火力の廃止と新規建設の禁止は世界的趨勢だ。

 2050年までにはあと33年ある。世界が政治的経済的大混乱に陥らなければ、この間に技術的なブレークスルーも十分期待出来るのではないか。再生可能エネルギーや蓄電設備は原発やダムなどと違い、開発や改良にかかる期間が短く、世界最先端の技術がすぐに手に入るという利点がある。
 また、分散型の設備は小型で、大量製造することで量産効果が期待出来る。ということで、あまりに悲観的になる必要はなく、80パーセント削減の旗は降ろさない方が良いのではないか。まずは、今年予定されているエネルギー基本計画を最新のデータと情勢分析を盛り込んで挑戦的な計画にすることだ。

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