日本エネルギー会議

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原発事故の原因論争

 福島第一原発事故は地震によって起きたとの表現がされるたびに、原子力の当事者からは、「原因は地震ではなく津波によるものである」との指摘が寄せられている。大地震による揺れで運転中の全基が自動的に原子炉を停止し、機器にも大きな損傷はなかったが、続いて襲ってきた津波によって電気室が水没してしまうなど冷却機能が失われたのが過酷事故の原因との見解である。
 今月、19日に挙行された古里原発1号機永久停止宣言式で文在寅大統領は脱原発の出発を宣言したが、韓国メディアは大統領がその演説の中で福島第一原発の事故の原因を地震だったという事実誤認をしたと指摘。「この50年余り世界で580基ほどの原発が稼動してきたが、これまでただの一度も地震により深刻な放射能流出が起きたり致命的なことはなかった」と批判している。
 
 いつものながら理屈っぽくて恐縮なのだが、事故原因を地震とするのも津波とするのも正しくないのではと考える。
 確かに単に地震で起きたとするのは2011年3月に福島で起きた事実からすると間違いである。もし、内陸部に原発があり大地震に襲われたら制御棒が瞬時に炉内に入って停止。その後冷却が行われ安全は保たれただろう。しかし、原発が建設されている沿岸部では海底の地震はほとんどの場合津波を伴い、大きな地震であれば津波も今回のように大きなものが来る可能性が極めて高い。
 言い換えると大津波だけ襲ってくるケースはほとんど考えられず、ほとんどが大地震によって起きた大津波が大地震の後に襲ってくるのだ。福島第一原発の事故は「大津波を伴った大地震」によって起きたというのが正しいのではないか。「大津波さえこなければ」と言っても、大地震が起きれば大津波が沿岸部にある原発を襲う確率は極めて高いのだ。東京電力は大地震にはしっかり準備が出来ていたが、それに伴う大津波を忘れていたということになる。
 ただし、福島第一原発の場合、大地震によって原発構内の送電鉄塔が倒れて外部からの電力を原子炉冷却に使えなくなって、内部電源に頼らざるを得なかったので、やはり大地震が過酷事故に至る一因を作ったことは認めるべきではないか。
 いずれにしても、「地震だけで過酷事故になった」とか「大地震が起きても大津波がこなければ過酷事故にならなかった」と言う表現は正確さを欠くので使わない方がよいだろう。

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