日本エネルギー会議

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原発事故で失われた財物

 福島第一原発の事故で福島県では多くの財物が失われた。経済的な価値としてどのようなものが失われたかを明らかにするには困難が伴うが、東京電力が法人、個人に支払った賠償の内容を見ればその概要を知ることが出来る。
 原発周辺の土地は農業のための農地、林業のための山林、工場などの敷地、公共施設や住宅の敷地として使われていた。その上に建てられた建物や構築物、さらには生産や営業のための設備と在庫、住居内の生活設備や庭などが失われたものとして賠償の対象となった。
 平易に言えば、原発周辺の人々は自分たちの持っていた土地や家を関東地方の電力消費者などに買い取ってもらったということになる。賠償を受け取った人々や企業は、賠償金で新たに県内外に農地や工場や家を購入することで、福島県浜通りにあった資産がそれ以外の場所に移されることになる。
 だが、東京電力は賠償によって財物の所有権移転を求めなかったため、現在も従来の所有者が財物の所有権をそのまま保持している。
 固定資産税は2011年度以降今まで免除となっているが、区域解除された後は何年か経ってから再び課税される見込みだ。
 関東地方をはじめとする全国の電力消費者は、割高な電気料金を支払うことになった。原発の電気を使っていたがための思わぬ出費である。現地では除染が終了すれば避難区域が解除され、元の所有者は戻って再び土地や建物(建物は長期間放置したことで壊れていなければ)を使用して生産や居住が出来る。
 だからといって元の所有者は賠償金を電力消費者に返す必要はない。単純に考えれば、被災者は再び使用できる分だけ事故前より財産が増えたことになる。
 焼け太りのような話だが、いくら金をもらっても経営していた企業や住んでいた家を離れ、避難先での生産活動の再開、暮らしの再建、人間関係の再構築の苦労を強いられることを喜んで受け入れる人はいない。福島県で財物を残して避難しなければならなかった人々や企業も高い電気料金負担をしている関東地方の消費者も巨額債務を背負った東京電力も大変な思いをしなければならなかった。誰もが原発事故はもう御免だと思っている。
 資源のない日本には当面、原発が必要であり、新基準で過酷事故の確率はゼロではないが十分に小さいことを頭で理解したとしても気持ちがついていかない。原発をなくしてその分、省エネをしようと考える人が出てきても不思議ではない。

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