日本エネルギー会議

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検証

 東京電力の旧幹部に福島第一原発の事故の責任を問う刑事裁判が初公判を迎えた。旧幹部が福島第一原発を襲った大津波が予見出来たかが争点となっている。東京電力は経済産業省の審議会で産総研の研究員が貞観地震の震源域と周辺で起きた過去の宮城県沖地震の解析から再来の可能性を指摘されていたことに対して、東京電力の幹部は「十分な情報がない」と対策を先送りしたと訴えられている。
 大企業の幹部は忙しい日程をこなしているが、東京電力の幹部は地震と大津波の問題の報告を受け、検討を指示するのにどの程度の時間を割いていたのか。それを検証するのは難しいが、先日テレビの報道番組にヒントがあった。
 それは建設関係の若い技術者が日夜仕事に追われ、休日も返上して残業を重ね、ついには精神を病んで自殺したことに対して両親が労働基準局に労災認定を求めた事件だった。両親は息子がどのように無理な勤務をしていたかを立証しようとしたが、勤務表などにはその記録は残されていなかった。また、現場や自室で行った業務はどのようなのであったかは知る由もなかった。
 しかし、両親は日付や時間の入った現場の写真や息子が作成した書類、日記や同僚の証言から、生前どのような業務をこなしていたか、プライベートの時間をいかに削っていたか、また上司からの叱責パワハラがあったかを克明に再現した資料を作成し労災認定を勝ち取った。これを見てこのような裏付け調査というものを考えた両親の粘り強さに感心した。
 東京電力の幹部や原子力部門の担当職員が東日本大震災の数年前から、どのような業務を行っていたか、そのなかで何に一番時間を割いていたのか、福島原発への津波の予測に関して報告をどのような形で何回受けていたか、指示は何回出していたか。役員であれば社有車の運転記録や秘書の日程表が残されている。役員会の議題や議事内容あるいは原子力部門内での会議の記録も残されている。
 当時、東京電力の原子力部門は全電力会社のリーダーの立場で電気事業連合会を取り仕切り、既設原発の稼働率の向上、六ヶ所の再処理工場の操業開始、東通原発の建設、プルサーマルの実施、ベトナムへの原発輸出の問題など多岐にわたる政治的色彩の強い問題を抱えていた。
 こうしたなか、どの程度の時間を割いて地震と津波の問題を検討していたか、審議会の委員、土木学会の学者、経済産業省の担当部署とこの問題についてどのようなやり取りをしていたのかを検証するための裏付け調査をすることが考えられる。安全確保を大前提としている原発を抱える組織が、どの程度十分な時間と労力を使って安全確保をしようとしたかが裁判の行方を左右する。

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