日本エネルギー会議

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主人公(3)

 電力供給体制を大きく転換するきっかけとなったのは、電力自由化のスタート、再生可能エネルギー開発の機運、そして福島第一原発の事故だ。福島県など地方では電力供給の事業主体が一部ではあるが電力会社から地元の自治体などに移行する動きが出てきた。
 今や全国の都道府県や市町村が熱心に発電事業に取り組み、エネルギー自給率を競い合っている。トップスリーは大分県(地熱)、秋田県(風力)、富山県(小水力)とそれぞれ電源に特色がある。市町村単位では自給率が100パーセントを超える所が全国に100以上ある。
 自給率といっても、それは数字の上の話であり、メガソーラーや風力発電所で起こした電気はFITによって電力会社に高値で販売され、各家庭や企業はいまだに電力会社からFITの賦課金を載せられた電気を買っているのであり、完全なる地産地消をしているわけではない。
 自治体が自給率にこだわるのは、FITを使った売電収入が自治体の財源になること、売れ残った工業団地や廃止となったゴルフ場など遊休地の活用になること、地場産業として雇用につなげられる可能性があること、クリーンなイメージを与えることなどだ。
 自給率が100パーセントを超えれば電力の移出自治体になる。電力の大消費地では自給率が低く(ワーストスリーは東京都、大阪府、京都府)、周辺の県にとっては移出への期待が高まる。地方の電力会社では再生可能エネルギーの系統接続制限が行われつつあるが、東京電力、中部電力、関西電力においては総需要が大きなために制限は行われていない。
 大都市の消費者が支払う電気料がダイレクトに地方の自治体の収入につながる仕組みだ。もし、電気の生産者と消費者が直接売買契約をするようになれば、これは「ふるさと納税」にも似た仕組みにもなる。大都市への人口集中、地方における人口減少と高齢化が進む中、財源としての期待は大きい。
 いままでは電力会社に土地を提供しての「電気のふるさと」だったが、今度は自ら主人公となっての電気のふるさと自慢が出来るようになる。海外でもドイツで自治体が主導権で再生可能エネルギーを広めたことやデンマークでは農民がそれぞれ小さな電気事業者となるなど似たような動きが続いている。
 エネルギー自給率を上げることで、自治体の役割も電力会社と住民の間に入って行司役、仲介役を務め、安全協定という紳士協定を結ぶ方式からの転換が迫られる。再生可能エネルギーは景観、騒音などの問題が起きやすく、住民の権利との調整が必要なことが多い。
 特に小水力発電や地熱発電は安定した有力な再生可能エネルギーであるが、農業あるいは温泉など観光業との関係調整が難航しがちだ。地元自治体としての調整力を発揮することが求められる。
 自治体などの運営する電源が一定模以内であれば、電力会社との競争にはならないが、競合するようなことになればそれをどのように調整していくかが問題となる。最終的に価格競争となるが、自治体の行っている再生可能エネルギーは今はFITという下駄を履かせてもらっている。
 FITがなくなった途端に自治体の開発意欲がなくなる可能性があるが、代わりに県税を投入してまで自給率を高めるのかは住民からすれば微妙な問題だ。

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