日本エネルギー会議

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示されたマップ

 経済産業省が先月公表した原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分用地の適性を4段階で評価した日本地図「科学的特性マップ」によれば、火山や活断層が周囲になく、最終処分の候補地となり得る適地は全ての都道府県に存在し国土の7割弱が該当している。
 このうち海岸から近く輸送の観点から最適とされた地域(緑色で表示)は国土の3割で、該当する自治体は全市区町村の過半数の約900に上った。経産省は秋以降に最適とされた地域で重点的に説明会を開き、候補地選定に向けた調査への理解を広げたいとしている。
 このマップに関していくつかの疑問が生ずる。まず、条件が少な過ぎる。火山や断層など地質上の問題と石油や石炭などの掘削の可能性、それに輸送に関して海岸に近いと大きく分けてこの三つしかない。
 それで900の自治体が好ましいに該当と言われても、そこには家も田畑もある。鉄道や道路が通り、人々が暮らしている。東京ディズニーランドや羽田空港なども“適地”の中にある。観光地、国立公園国定公園も緑の地域には多い。
 飛行場を作るにしても周囲も含めて広大なまとまった敷地が必要なことは誰にも想像出来る。処分場には周辺も含め、いったいどの程度のまとまった土地が必要としているのかが不明である。
 日本の場合、特に緑の地域は人口密度が一番高いと思われ、使用されずに残されたまとまった土地があるところはごく限られてくる。
 NUMOの近藤理事長も「最終処分をめぐって他国に学ぶところもあるが、なかなか難しい。最終処分地の選定を終えたフィンランドとスウェーデンは、人口密度(居住地域)が日本の100分の1ですよ。」と述べているくらいだ。
 さらに福島と青森を外したことに対してどのような説明がされるのか。全体のために他の迷惑を受け入れている基地の沖縄、原発のある県も「我々は既に十分な負担をして全体に貢献している」と主張し、最初から対象から外すよう要求してくるだろう。これで人口密度の低い北海道も入らず、対象となる県は半分以下になってしまう。
 経済産業省は「今回の科学的特性マップの発表は、国民の皆様に日本のどこが処分場建設に適しているか、議論していただくきっかけにしてもらうためのものです」「科学的特性マップは、地層処分を行う場所を選ぶ際にどのような科学的特性を考慮する必要があるのか、それらは日本全国にどのように分布しているか、といったことを分かりやすく示すものです」と言っているが、議論するにはあまりにも内容が偏り過ぎ、イメージがまったくわかない。
 経済産業省が、今は専門家によるワーキンググループが過去の地質研究を反映させたマップを作った段階であり、実際に場所を決めたとして、そこからまず20年は調査に費やすというから、今年生まれた子供が成人式を迎えても、まだ処分場の姿かたちも見ることができない。
 このマップを提示したことで、緑色以外の区域の自治体や住民は一安心で、処分場問題を忘れてしまうだろう。一方、緑の区域の自治体や住民は身構えてしまった。マップの提示とその後のコメントは処分場問題に対する国民の分断のスタートである。
 マップを提示することで議論を盛り上げようとしたのだろうが、最初にやるべきことは経済産業省など国が主役から降りて傍聴人となり、処分場の必要性や期限、引き受ける地域が「それでは引き受けましょう」と胸を張れる大義を考えること、またどのような議論のプロセスをたどるべきかという入口の議論だったのではないか。

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