日本エネルギー会議

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破綻回避(1)

 日本における原子力開発は国と電力会社による破綻回避の歴史でもあった。福島第一原発の事故を経た今も破綻回避は続いている。
 本シリーズでは、原子力の開発当初からどのような破綻回避が行われてきたか実例を紹介し、続いて国や原子力関連組織は何故、破綻回避をせざるを得なかったのかを解明する。また、何故このような回避が可能であったかその背景に迫ってみる。さらに、この破綻回避は日本の原子力開発をどのように変質させたかを考察する。  
 個人や組織にとって行動目的や生存条件が破綻の危機に遭った場合、回避行動を取るのは当然なことであり、自然界でも種の保存のために常に行われている。
 原子力開発の場合、国や電力会社が行った破綻回避は組織的であり、国家の存続と繁栄に資する原子力開発を行うという本来の目的とともに、原子力開発を行う組織などが存続発展することも目的となっている。
 もし、後者のために前者が主張されるようなことがあれば、それは本末転倒であろう。
 組織的な破綻の回避は歴史でも学ぶことが出来る。まもなく終戦記念日を迎えるが、旧日本軍の戦時中の行動も破綻の回避の連続であった。旧日本軍は自らが戦端を開いた戦いを止めることが出来ず、国民に対して敗走を転進と偽りながら破綻回避を続けた。
 領土も戦争遂行能力もすっかり失いながら、建前上は破綻を認めないままに終戦を迎え、連合国の手で一方的に武装解除され、領土は四つの島だけになってしまった。
 権威を守るため前言を取り消すことが出来ない。前任者との信義関係を失うことや責任追及を恐れ、権益を守るとともに自らの居場所がなくなることを恐れる。
 自分たちの抱いた夢を捨てきれず、敗北の事実すら認めようとしなかった。旧日本軍が破綻を回避したために、どれほどの国民や兵士、そして敵兵や戦禍にあった国々の人々に犠牲者を出したか。破綻回避はその後の見通しを持って周到に考えて行われるものならば良いが、旧日本軍のように理性を欠き、損害や犠牲を無視して行われるのであれば未曾有の悲劇となる。
 破綻の回避はその理由が合理的なものであり、かつステークホールダーに対して状況や理由が事前に明確に示されるべきである。原子力開発においても、破綻回避を行う際には、その理由を明確にして合理的な判断であることを示す必要がある。
 原子力開発をこれからも進めようとする国や電力会社は、国民の信頼を取り戻すため、いままで原子力開発で行われてきた破綻回避がこれらの説明責任を完全に果たしてきたかどうかを検証する必要がある。逆説的に言えば、これまでの破綻回避の理由を真摯に説明し、納得してもらえない限り国や電力会社は国民からの信頼を回復することは土台無理である。

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