日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

足元の不安

 8月12日付の日本経済新聞が報じた「新電力全体の家庭向け月間販売電力量が北海道電力など4社の販売量を抜いた」という記事を読んで衝撃を受けた電力関係者は多いはずだ。電力小売り全面自由化から1年。ここまで新電力が9電力会社の顧客を奪ったことが数字で露になったのだ。
 9電力会社が高コスト体質を改善し、より安い料金プランを提示出来なければ、新電力に仕入れの問題はあるにしてもこの傾向が続くはず。日本全体の電力需要の減少が毎年続いている中、その少なくなったパイを奪われるのだから余計に辛いはずだ。
 一方、電力会社が頼みにしている原発の再稼働は遅々として進んでいない。原発を維持するだけでも日々多額の費用がかかっている。これを支えているのは火力や水力によって発電した電気を販売して得ている料金収入だ。
 減収、減益が続けば、財務体質は悪化し株価は下がり、必要な投資もままならないようになる。再稼働出来ない原発を抱えていることは電力会社にとってますます重荷になってくる。
 これから新基準適応改造工事、廃炉費用の積立不足の補填、日本原燃への支援、使用済み燃料中間貯蔵施設の建設、福島第一原発の事故処理費用の分担も行わねばならず、懐の深い電力会社も体力が尽きる可能性がある。
 経産大臣がエネルギー基本計画の見直しにあたって「大枠は変えない」と言ったとしても、電力各社の原発をベース電源として維持して行くことは現実的に難しくなる。
 となると、なんらかの国の財政支援、原発の国営化、原発からの電気の買取り保証、廃炉に関しての会計ルールの見直し、バックエンドに関する何らかの国の経済的支援、原子力規制基準の合理的運用などの要求が原発を抱える電力会社から出てくる可能性がある。
 関西電力や九州電力のように原発再稼働で一息ついている会社と沸騰水型の原発を抱え未だに再稼働の見通せない電力会社では要望内容も違ってくるかもしれない。
 9電力会社は自由化に伴って、火力発電分野での合併、販売に関する新たな提携先の獲得やビジネスモデルの開発、再生可能エネルギーの開発、海外電力事業へ参入などを進めてきたが、未だに足元の不安を払拭出来るような状況にはなっていない。
 最大の財産である火力や水力の発電設備、送配電設備などの維持も怠ることは出来ない。また、原子炉設置者としての原子炉規制法、電気事業法上の義務の履行からは逃れられないことも明らかだ。規制によって手足を縛られながら競争相手から戦いを挑まれている9電力会社の経営はかつてない厳しい状況にある。
 エネルギー基本計画の見直しで「大枠は変えない」との経産大臣発言は、穿った見方をすれば、原発を重要なベースロード電源の位置に留めることで、原発を抱える電力会社に対して今後行われるであろう国からの救済措置を正当化するためのものではないかとも考えられる。 

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter