日本エネルギー会議

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破綻回避(4)

 「原子力政策大綱」に書かれた内容を実現するため、2006年に8月に決定された「原子力立国計画」をつくったことも破綻回避のひとつだ。
 国内で原発の新増設が進まない中、原子力発電比率の中長期的実現、核燃料サイクルの着実な推進など従来路線を踏襲するとともに、国が原子力発電拡大と核不拡散の両立に向けた国際的な枠組み作りへの積極的関与をするとした。
 具体的には途上国などへの原発売り込みを含めた海外展開である。これまでの原子力産業の規模と技術力を維持するため海外に活路を求めた打開策で、当時は関係者から閉塞状況から抜け出す画期的な方策として大いに歓迎されたものだ。
 これに乗って日立、東芝、三菱重工の原子炉メーカーは国や電力会社の支援の下、一斉に海外の建設計画に乗り出すことになった。しかし、福島第一原発の事故後の原発の安全対策の強化がコスト高を招き、海外での原発建設計画の遅延、計画の撤回などが続き日本メーカーは3社とも将来の夢どころか逆に重大な経営問題を抱え込んだ。
 なかでも名門ウェスティングハウスを買収し世間の耳目を集めた東芝は、国内での原発事業の誤算や海外での損失の隠蔽に走り、株式一部上場廃止にまで追い込まれた。現在、国は原子力立国計画に協力した東芝を救済するために、一番の稼ぎ頭の半導体事業売却の手伝いまでして、不採算の原因である原子力事業を守ろうとしているが、これも原子力立国計画など従来の政策の破綻を指摘されたくないからだろう。
 また、日立や三菱重工の海外案件も不安要素があり、これが将来、メーカーの屋台骨を揺るがすことになった場合、国が救済することに関して東芝が前例となるとも考えているはずだ。
 福島第一原発事故後、東京電力は実質的に破綻したのだが、国はさまざまな理由をつけて東京電力を実質国有化し、国からの資金投入、各電力からも支援させることで廃炉、賠償、除染などが出来るような枠組みを作りあげた。
 福島県全体での広範囲な除染が行われた結果、放射性物質を含んだ大量の土壌が発生し、この処分先を福島第一原発のお膝元である大熊町双葉町にまたがる土地に計画したが、地権者の同意が思うように進まず(現在でも同意は全体の3分の1)、中間貯蔵施設にはわずかな量しか搬入できていない。
 これも富岡町、浪江町などを中心に広大な汚染土壌の仮置き場を作って巨額の賃貸料を支払うことで除染計画の破綻を回避している。
 さらに、大胆な破綻回避は福島第一原発の廃炉事業だ。福島第一原発の事故処理費用の見積もりは大幅に見直され、今や当初見積もりの2倍以上になっている。当初の見積もりは工事内容がほとんどわからない時期であったにせよ、最低限の見積もりをすることで国民や住民への衝撃を和らげる効果を期待できた。これも一種の破綻回避だ。
 次回以降は、一般的には無理筋と思われる破綻回避が可能だった背景や、破綻回避の結果どのような影響が生じたかについて考察する。    (つづく)

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