日本エネルギー会議

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破綻回避(5)

 日本における原子力開発は国と電力会社による破綻回避の歴史でもあった。福島第一原発の事故を経た今も破綻回避は続いている。今回から破綻回避が可能だった背景を論理的視点、政治的視点、経済的視点から整理する。
 論理的視点からすれば、何らかの犠牲を払っても原子力開発を続ける必要があるとの主張が説得力を持つ以下のような状況があった。

・戦前戦後を通してエネルギー資源のない日本が海外からの輸入資源に全面的に依存している状況は危ういものであり、現に太平洋戦争と二度の石油ショックを経験している。原子力は準国産のエネルギーであり、エネルギー安全保障上も多くの利点を持っている。そのための原子力開発であり、途中で旗を降ろせばまた以前の危うい状態に戻ってしまい、国際収支、電力の安価で安定した供給の面でも問題が生ずる。

・経済成長に伴い大きくなった電力需要に対応するには出力が大きい原子力に依存するしかない。

・国際的約束である温暖化ガスの削減には二酸化炭素を排出する火力を減らさなければならないが、再生可能エネルギーはまだ実績が乏しく、原子力を増やす以外にない。

・原子力の利点を最大限に活かすことが出来るのが核燃料サイクルであり、ウラン資源も乏しい日本は当然それを活用することが必要である。また、核につながるプルトニウムを貯めないで消費することを諸外国から求められている。

・必要な敷地の小さいこと、コストに占める燃料の割合の少ないこと、燃料購入先の分散と安定、燃料の運搬や備蓄の容易なこと、出力が安定し発電効率がよいことなど原子力は他の電源にない長所を備えている。

・原子力開発は時間がかかるものであり、また今後の研究開発に期待するところが多いため、課題の先送りや代替案採用をしても実際にすぐに困ることにはならない。また、先送りすると将来行き詰まることを誰も証明出来ない。

・これまで数十年かけて人と物に行ってきた投資の累計は巨額なものであり、撤退はそれらを無駄にしてしまうので得策ではない。

・日本の工業水準は高く技術は世界トップクラスであり、原子力の安全性については設計上も運用上も十分に確保され、小さなトラブルはあるが大事故は起きない。

 こうしたエネルギー安全保障上と温暖化対策上の原子力の必要性などに対して、反対派をはじめ誰も原子力推進路線を止めても国が存続出来るとする説得力のある主張が展開出来なかった。
 さらに原子力開発が進むにつれて電力供給に占める割合が3割に達し、原子力開発路線を破綻させることそのものが大きなリスクになって、破綻回避をせざるを得ないとの主張がますます説得力を持つようになった。  

 次回は政治的視点から破綻回避可能だった理由について      (つづく)            

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