日本エネルギー会議

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原子力委員会の「基本的考え方」(3)

 ひと月ほど前、新しい原子力委員会が発表した報告書「原子力利用に関する基本的考え方」を読みなおしてみると、いくつかの疑問が浮かんだ。今回は三つ目、四つ目の疑問について。
 
 「基本的考え方」には次のように書かれている。
 原子力利用の在り方、東電福島原発事故及びその影響、福島の復興・再生に関すること、原子力を取り巻く環境等について、有識者から広範に意見を聴取するとともに、意見交換を行ってきた。
 これらの活動等を通じて国民の不安の払しょくに努め、信頼を得られるよう検討を進めてきたところであり、その中で様々な価値観や立場からの幅広い意見があったことを真摯に受け止めつつ、今般、「原子力利用に関する基本的考え方」を策定することとした。

 果たして、有識者から後半に意見を聴取、意見交換することが国民の不安の払しょくと信頼獲得につながるのだろうか。
 従来の委員会も有識者や専門委員会での意見聴取、意見交換が行われてきたが自分たちに都合のよい意見を持つ人だけに限定していたため、耳の痛い意見を聞くことはなかったのではないか。
 それを今回は改善したとして「様々な価値観や立場から幅広い意見があったことを真摯に受け止めつつ」と書いたあたりにそのことがうかがえるが、どのような価値観や立場の人から聞いたのか、彼らの意見にはどのようなものがあり、委員会はどのような意見を傾聴に値すると考えたかを示してくれなくては国民の不安の払しょくと信頼獲得につながるとは思えない。

 続いて四つ目の疑問について。
 「原子力を取り巻く環境変化・東電福島原発事故による影響」として次のように書いてある。
 東電福島原発事故は、福島県民をはじめ多くの国民に多大な被害を及ぼし、これにより、我が国のみならず国際的にも、原子力への不信や不安が著しく高まり、原子力政策に大きな変動をもたらした。
 今後、原子力利用を続けていく上では、放射線リスクへの懸念等を含むこうした不信・不安に対して真摯に向き合い、その軽減に向けた取組を一層進めていくことにより、社会的信頼を回復していくことが必須である。      
 加えて、原子力利用の安全を確保するための取組を着実に進めるとともに、原子力の安定かつ安全な利用実績の積み重ねを通じて国民の不信や不安を軽減することの重要性も顕在化してきている。
 また、G7伊勢志摩サミットの首脳宣言(平成28年5月)において、原子力政策に対する社会的理解を高めるために、科学的知見に基づく対話と透明性の向上が重要である旨が盛り込まれるとともに、最高水準の原子力安全を達成し、維持していくことへのコミットメントが再確認された。

 この箇所を読んで、福島第一原発の事故に対する認識の甘さに驚きを隠せない。
 監督官庁が事業者の虜になり、海外の動向にも日本では過酷事故は起こらないと勝手にきめつけ、出来ることもやらずに住民避難にまで至ったことの重大さは「不信・不安に対して真摯に向き合い、その軽減に向けた取組を一層進めていく」や「実績の積み重ね」などの言葉では、とうてい済まされないものではないか。
 また、サミットでの「最高水準の原子力安全を達成し、維持していくことへのコミットメントの再認識」をここに書き込んだのはなぜか。「最高水準の原子力安全」が言葉だけのものであり、裏付けがないことに批判があることも忘れてはならない。原子力委員会までが安倍首相の言葉に踊らされているように受け取られてもしかたがない。
                              (つづく)

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