日本エネルギー会議

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処分場問題の難しさ(2)

 前回に引き続き、核のごみ最終処分地選定問題を考える。
 公表された科学的特性マップでは「好ましい地域」の中でも特に海岸から20キロまでが「最も好ましい地域」として濃い緑色で表示された。
 核のごみが再処理施設からガラス固化体となって海上ルートで搬入されることから輸送面でも好ましいので「最も好ましい」としたと説明されている。ガラス固化体は六ヶ所村の日本原燃の施設か海外の再処理工場から来るから、運搬は船舶による海上輸送となり受け入れには港湾施設が必要で、海岸から20キロ以内の距離に最終処分場を設けたいという理屈はわかる。
 ガラス固化体など高レベル放射性廃棄物の輸送は、通常時速10キロで走るトレーラーで行われるので輸送時間は2時間以内でということだろう。ご丁寧に上り勾配もきつすぎないように処分場は標高1500メートル以上の場所はダメだとしている。
 テロなどを警戒したのか、あるいは沿道住民に配慮したのか高レベル放射性廃棄物の輸送を短時間に行えることにこだわっている。
 陸上輸送時間の短さはメリットと言えるが、海岸から20キロとしたためのデメリットもたくさんある。

・海岸から20キロに限定したために、好ましい地域が7割から3割となって、より選択肢が少なくなった。20キロと30キロ、あるいは40キロとどれほど違いがあるのか。輸送時間をどうしても2時間以内にするのは最優先課題ではあるまい。

・「最も好ましい地域」は他の地域に比べると平野が多く、最も人口密度が大きい場所であり土地の利用が進んでいる地域でもある。農業、漁業などとも関連し、工場や住宅なども最も多く財政も比較的豊か、科学的特性は良くても、社会的特性は最悪である。
 NUMOの近藤理事長も先日のテレビ出演で「北欧と比べると日本は人口密度が彼の地の100倍ですから」とため息をついていた。人口密度が悩みなのであれば、最も人口密度が高いところを「最も好ましい」としたのはなぜか。そこのところは理解に苦しむ。

・海岸といえば、日本の原発は冷却水確保のためすべて海岸にあり、立派な港湾施設も造られており原発敷地やその周辺は「最も好ましい地域」の中でも最有力な場所であると思うのだが、原発立地県の知事は「当県は原発など既にあるもの以外に負担をするつもりはない(福井県、鹿児島県、青森県)」とすでに拒否反応を示している。
 これが他の原発立地県にも伝染すれば、「最も好ましい地域」の多くを失うことになる。

・海岸はこれまで長年にわたって侵食をされつづけており、この点も配慮するとしているが、期間が万年単位では温暖化による海水面上昇、異常気象なども予想されるなど、外される地域も多いと考えられる。

・海岸にはこうした問題に敏感な漁業者がいる。彼らは福島第一原発の事故による操業自粛、風評被害を経験したり聞いたりしており極めて神経質である。
 また、日本人は海洋民族として海そのものや海洋生物に対する独特の聖域観を持っている。沿岸の陸地部分から斜めに穴を掘って処分場本体は海底という妙案もあるが、島嶼部も含めて海に近いことのハードルは結構高いのではないか。
 処分場を海底にした場合、陸上における地質などの科学的調査に加え、海水の挙動や水圧の問題、あるいは海底の地質に関することなど、検討課題がさらに増えてしまうことも悩ましい。

 処分場の議論は、まず、どのような議論の進め方をするべきかを衆知を集めて作り上げることから始める必要がある。経産省がとにかく議論をスタートさせるために無理矢理に科学的特性だけを切り離して示したために、議論の道筋が本来あるべきものから大きく外れてしまったようだ。     (つづく)

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