日本エネルギー会議

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破綻回避(6)

 日本における原子力開発は国と電力会社による破綻回避の歴史でもあった。福島第一原発の事故を経た今も破綻回避は続いている。
 前回の論理的視点に続き、今回は政治的視点から破綻回避が続けることが出来た背景を整理する。政治的視点からすれば、原子力開発は何らかの犠牲を払ってでも続けるべきことであったのである。

・戦後の原子力の平和利用は、アイゼンハワー大統領のアトムズ・フォー・ピース宣言をきっかけに準国産エネルギー確保政策としてスタートした。
 それは政権与党、通商産業省、文部省の官僚組織と電力会社・重電メーカーを中心とした原子力産業界、国の研究機関・国立大学などによって担われることになったが、その裾野は広く、関連する製造業、建設業、金融業、商社、関係諸団体、一部マスメディア、一部労働組合なども含まれ、原子力開発推進という目的で繋がった一大政治勢力であったため、必要がある度、立法、予算配分、官庁の行政指導、地元自治体の了承において破綻回避に協力させることが出来た。  

・平和利用の中心となった原発の導入は自前の技術を積み重ねるのではなく、アメリカから急ぎ商業炉を輸入し国産化していく手法が取られた。
 核に関わる技術であるため、アメリカなどが主導した核拡散防止の枠に入ることで常に国際政治との関わりを持ち続けた。特に国内再処理は非核保有国としては唯一日本だけが認められたものであった。
 国際的には「再処理はするが不要なプルトニウムは保有しない条件」が原子力開発計画の破綻回避の際の政治的判断のもとにもなっている。

・原子力開発推進の下に結集した上記の政治勢力は、特に原発や関連施設の立地のための電源三法交付金制度の創設と拡充、研究開発への国費投入、事故トラブル後の早期運転再開に向けての地元自治体の了解取得などに政治力を発揮して破綻回避を実現することが出来た。

・国策民営の旗の下で、電力会社は原子力理解活動を関係諸団体を通じて全国的に展開し、また直接立地地域などに浸透させることによって世論の過半と立地地域の住民の大半が原子力開発に賛成することに成功を収めつつあった。

・政党と関係官庁は国のエネルギー基本計画の中に原子力をしっかりと位置づけ、さらに大綱や長計によって裏打ちするなど原子力推進を国是とすることで自らの権力基盤の強化にも役立たせていた。
 具体的には政党に対しては政治献金と選挙の際の組織票、関係官庁に対しては監督権限、予算配分と執行権限、天下り先の確保などである。こうしたメリットは原子力政策が破綻を回避することで守られていった。

 原子力開発推進の政治勢力に対して、反対の立場の政治勢力も同時に存在したが、その力は発揮されることはあまりなかった。そもそも原子力開発が選挙などの争点になることは立地地域の自治体の首長選挙以外にはほとんどなく、選挙の争点にはならないと長いあいだ言われてきた。
 長期にわたって与党であった自民党は産業界を背景に一貫して原子力開発推進政策を取り続け、代わった民主党も電力や電機の労働組合を背景に同じく原発推進で、一貫して原子力開発に反対を訴えてきたのは共産党など少数の野党だけであった。わずかな修正はあるものの、こうした政治によって原子力開発の破綻回避は常に正当化されてきた。

 次回は経済的視点から破綻回避が出来た背景について。     (つづく)

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