日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

破綻回避(8)

 日本における原子力開発は国と電力会社による破綻回避の歴史でもあった。福島第一原発の事故を経た今も破綻回避は続いている。前回までは破綻回避が続けることが出来た背景を見てきたが、今回はその後の変化と、その結果破綻回避が困難になりつつある現状について述べたい。

理論的視点からは

・主力の火力発電の燃料(天然ガスと石炭)はアメリカのシェールガスなどによって資源輸入先の分散化が進んだため、供給不安定の根拠が揺らいだ。

・福島第一原発の事故以降、全発電量に占める割合が低くなったため、脱原子力のハードルが低くなった。諸外国は脱原発の国と拡大の国に二分された。

・電力需要が10年前から減少傾向にあり、省エネや人口減少で今後も減少するため、大型電源を建設する必要性が少なくなってきた。東西の周波数変換設備、北海道本州の連携線強化など供給の安定性も増している。

・太陽光発電と風力発電が世界中で急速拡大し、発電コストが下落。原発の発電コストは安全対策追加投資で上がり続けている。

・福島第一原発の事故後、石炭火力が増加し温暖化ガス削減が進まなくなっている。先進国は石炭火力廃止の方向になり、原発の必要の根拠が補強された。

・もんじゅの廃炉と大間原発の完成延期で溜まったプルトニウムは軽水炉のプルサーマルによるしか消費出来ず、諸外国の懸念が強まる可能性がある。燃料サイクルによる半永久的な燃料確保は実現しそうもなくなった。

・長期の運転停止や建設のないことで原子力メーカーや関連産業は人材や製造設備が急速に弱体化している。

政治的視点からは

・福島第一原発の事故後、意識調査で国民の過半数が脱原発の意向を示しており、政策的に無理やり原子力をテコ入れすることはやりにくい状況になっている。与党は引き続き原子力推進方針であるが、エネルギー基本計画に「原発を出来るだけ少なくする」と書かざるを得なくなった。

・原子力規制委員会が設置され、新基準による厳しい審査を行うなど法律的にも規制による強化が行われた。

・脱原発を唱える元首相も現れ、知事などが原発の再稼働や廃棄物問題に対し批判的な態度を取る自治体首長が珍しくなくなった。

・原発を巡る裁判結果で運転を停止せざるを得ない例が出てきた。

・東京電力や電気事業連合会の力が弱まり、大手メディアも推進、反対に二分している。

・原子炉メーカーや関連企業は建設工事やメンテナンス工事が減り、国が懸命の支援をしているが、その勢いは衰えつつある。

・余剰プルトニウムに対する諸国からの懸念は大きくなりつつある。

・途上国への原発輸出の試みは頓挫し、輸出への批判が強まっている。

最後に経済的視点からすると

・電力自由化が実施され地域独占がなくなったため、契約先を新電力に変更した顧客は全体の1割に達し、電力会社間でも顧客の争奪が始まり、発電コストは直接収支に影響することになった。既設の原発は発電コストが安いが、新規に建設すればその発電コストが高く競争力はない。

・新たな知見が出れば対策の水平展開が求められる。今後の追加投資規模が不明で、電力会社は原発保有によるリスクが高くなり、税金投入がなければ経営上、原発を維持することは困難になりつつある。

・長期にわたる原発の停止と改修費用は徐々に電力会社の財務を蝕んでおり、事業が進まない日本原燃や日本原電などを支えるだけの財政的余裕を電力会社が失いつつある。

・金融機関も電力会社が抱えるさまざまなリスクを注視するようになり、政府の保証なしでは、いままでのような融資が出来ない状況になっている。

 次回は、国や電力会社が原子力開発計画の破綻回避を続けた結果、さまざまな政策や財務そして組織の体質に歪みが起きてしまった点を指摘したい。
                             (つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter