日本エネルギー会議

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廃炉と広報

 福島第一原発の廃炉が始まって6年以上が経過した。福島県民が廃炉に関する情報を知る機会は主にテレビのニュースと新聞で、その他に国、県、東京電力からの広報パンフなどがある。若い世代はインターネットからの情報に依存しているが、内容はテレビ、新聞の伝えるものと変わらない。
 原発運転中と同じく、トラブルや計画に対する遅れなどについては小さなものまで報道されるわりには順調な成果については報道されることは少ない。トラブルは事実だけでなく原因なども詳しく報道される。
 また、過去の事例も引き合いに出されることが多い。メディアはまるで事故の風化をさせないという意思を示すかの如く執拗に福島第一原発の事故関連の情報を報じており、テレビは少し強い地震があれば、すかさず「原発は異常なし」と伝えている。
 特にNHKは昼と夜のローカルニュースの天気予報の後に、一日も欠かさず県内各地の放射線量を双葉郡とそれ以外に分けて地図上に数字で表示し、毎回同じ原稿のアナウンスを行っている。
 さらに福島第一原発の放水口付近の海水中のセシウムなどの測定結果(ほぼ全部が不検出)も伝え続けている。毎日の線量はほとんど変化がなく、視聴者が視ても何の反応も起きないようになっている。
 節目節目で月単位や年単位のトレンドを示すようなことは一切やらないので、視聴者に廃炉中の原発に対する警戒心を解かせないように意図的にそうしているのかと勘ぐりたくなる。
 次に国や県や東京電力は廃炉についてどのような広報をしているかを見てみると、資源エネルギー庁が昨年2月に配布したA4版カラー刷22ページの冊子がある。表題は「廃炉の大切な話」福島第一原発の今、全体像、当面の課題(溶けた燃料の取り出し、汚染水対策、労働環境改善)という内容だ。
 Q&Aに「再び爆発する危険性はないの?」とあり、そのAとして「事故時に溶けて固まった燃料は、事故当時に比べ発熱量が大幅に低減しており、継続的な注水により冷却することで、各号機とも安定した状態を維持しています」と書かれている。また、「事故当時は、原子炉に水を送ることができなかったため、燃料が発熱し、水素が発生、爆発が起きました。現在は継続的に注水しています」となっている。   
 福島県原子力安全対策課は今年7月から年数回のペースでA3版カラー刷リ両面のパンフレットを配布している。題名は「廃炉を知る」だ。廃炉作業や原子炉の状況、県としての監視活動などが写真とともに説明されている。
 その第二回(今月発行)では、「継続的な注水で冷却することにより、原子炉の安定した状態を維持しています」と書かれており、原子炉内の温度の折れ線グラフの説明として「現在、原子炉格納容器の温度は、20℃~45℃程度の範囲で推移しています。この温度は、燃料デブリが再び溶融する温度よりも十分低い温度となります」とある。
 再溶融する温度は何度と想定しているのかと県の担当者に電話で質問すると「約1000度」との答えが返ってきた。継続的な注水をしていると書いてあるので、一般の人は水が沸騰する100℃程度と思うはずなので、溶融する温度の後に(約1000度)と書くべきだろう。
 東京電力は2年以上前から「廃止措置等の進捗状況」と題したA3ないしA4版の両面カラー刷一枚もののパンフレットを毎月のように配布している。以前その記事のわかりづらさについてエッセイでも指摘したが、最近はかなり改善されている。
 今年1月発行の紙面には、「1~3号機の原子炉格納容器の温度は、この1ヶ月、約15℃~約25℃で推移しています」と書かれ、また、「原子炉注水量を低減しても、原子炉圧力容器底部等の温度は想定範囲以内で推移しています」となっている。
 毎号、遮水壁の状況、3号機燃料取り出し計画など広範囲な話題を取り上げている。残念ながら、東京電力のパンフレットにも線量測定結果などのトレンドグラフは掲載されないため、どの程度原発が落ち着いたのかは伝わってこない。
 このように発信元の伝える情報の内容や伝え方の不適切さによって、県民の福島第一原発の状況に関する認識は、事故後一定期間を経過した時点のもの(まだまだ安心は出来ない、注水が止まったら大変)がそのまま固定化してしまっている。

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