日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

破綻回避(9)

 破綻回避を続けた結果、原子力政策や関係する組織の体質にさまざま歪みが起きている。そのような事例のいくつかを挙げてみると、

(核燃料サイクルなどの政策)
 再処理路線が破綻しないように回避を続けたため、使用済み燃料の直接処分の検討が閉ざされてしまい、使用済み燃料の中間貯蔵のための乾式保管庫建設をせざるを得なくなった。
 高速増殖炉「もんじゅ」が運転出来ずプルトニウム消費が行き詰まり、それを回避するために軽水炉でのプルサーマルが突然浮上。
 その早期実施が電力会社に大きな圧力となった。東京電力では大津波対策を明らかにすることがプルサーマルの地元対策上マイナスとなるため、社内で問題を先送りする方向に走り、福島第一原発の事故の原因のひとつとなった。今後もプルサーマルだけではプルトニウム消費の問題は解決しない。
 核燃料サイクルを破綻させないよう、電力会社が再処理工場を急ぎ建設したため、さまざまな問題が噴出し竣工を何十回と延期することになった。また、日本原燃をコスト意識のない組織にしてしまった。その結果、電力会社は追加負担に喘ぐようになり、万一日本原燃が行き詰まると全電力会社が債務超過になるリスクを抱えてしまった。
 福島第一原発の事故以降は、原発をエネルギー基本計画で重要なベースロード電源に位置づけることで、原発がなくなってしまうことを回避しようとしたため、実現の見込みのないシェア20~22%の目標設定となり、結果的に再生可能エネルギーの育成を抑制してしまった。
 返還されたガラス固化体の置き場所をとりあえず確保するため青森県と最終処分場にしないこと、受け入れ後に年限を切って搬出することを約束したため、核燃料サイクル計画から撤退することを検討することが出来なくなった。もし六ヶ所の再処理工場竣工を断念すれば、全国の原発を停止せざるを得ない状況に追い込また。
 破綻回避によって必要となった費用、福島第一原発の事故対応費用などが電気料金の上昇要因となった。回避のために何度も計画、工程などを変更したことで、一番大切な原子力政策に関する国民の信用が失われた。

(内部体制、業界の体質)
 国内の原子炉メーカーを3グループに絞ったことで、電力会社がPWR派とBWR派に別れてメーカーと癒着の関係になり、他社と競争しないことで健全な成長が行われなくなった。
 国と電力会社と原子炉メーカーが協力して破綻回避したため三者が運命共同体になり、緊張感、危機感が薄れてしまった。
 その結果、過酷事故対策実施の延ばしなどにより、欧米に安全面で遅れをとった。
 国は原子炉メーカーの国内の受注が減って破綻してしまうのを回避するため「原子力立国計画」で海外進出を促したが、経験不足で見通しが甘く、逆にメーカーが大変厳しい状況に追い込まれた。
 電力会社は原子力の破綻回避のために社内の資金や人材を優先的に投入したため、全社的にバランスを欠き、古い設備の更新や自由化に対する各部門での十分な準備が出来なかった。現在も原発の再稼働が最優先課題であり、この傾向は続いている。
 不祥事が起きても電力会社では経営陣の偽装退陣が行われただけで権限はそのままだったため、以前の方針を変えづらく、また次の世代の経営陣が育つ機会が失われた。
 破綻回避には組織内の結束を高める必要があったため、内部のしめつけが強まり、情報管理強化や内部の異論の排除など組織の民主的運営、対外的な柔軟性が失われた。
 立地対策での破綻を回避するため電源三法交付金制度の拡充や電力会社の寄付金支出が増え、立地自治体が荒い金の使い方をするようになるとともに、双方の相互依存関係が決定的になり、自治体の電力会社へのチェック機能がなくなった。
 破綻回避が容易に出来たことから、国や電力会社では問題が起きると政治力や経済力で破綻を回避しようとする傾向が強くなり、技術的努力や経営的な努力を怠るようになり、企業として必要な実力が失われてきた。
 必要な問題の解決よりも破綻回避の仕事に没頭するようになってしまった。

 本シリーズは次回で終了予定。そこでは、電力会社などは破綻回避をこのまま続けられるのか、破綻回避による国民の負担や資源の浪費をどうやって防げばよいのかなどについて論じる。
                               (つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter