日本エネルギー会議

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今、注目している技術

 エネルギー問題では再生可能エネルギーがもてはやされ、原発や石炭火力は環境汚染源と批判されることが多い。先進国では原発は退潮。英国では火力発電所は2025年頃に全面的に閉鎖されるとされている。一方、これらの動きを封じて原発と石炭火力が復活するかもしれない二つの技術開発が進んでいる。
 今注目している技術の一つ目はダイヤモンド誌が先月伝えたトリウム熔融塩炉だ。嶋矢志郎氏の書いた記事によれば、トリウム熔融塩炉の特性は、

(1)トリウムを燃料としているため、自らはプルトニウムをはじめ、超ウラン元素のような、危険な「核のゴミ」をほとんど出さない。

(2)したがって、核兵器への転用は不可能で、核不拡散と平和利用に向いている。

(3)技術上、原理的に安全性が確保できる。

(4)他の電源に比べて、電力が原理的に安く作れる。既存の発電コストに比べて、大幅に安くなる。目標は、3円/kWhに設定されている。

(5)熔融塩炉が液体燃料炉であるため、プルトニウムなど超ウラン元素の燃焼、消滅が容易である。

(6)既存の軽水炉が排出する「核のゴミ」を燃焼、消滅、処理できる。

(7)軽水炉の負の遺産である余剰プルトニウムの燃焼、消滅も可能で、国際的に疑われている処分問題も解決できる。

(8)基本的に安全で、小型化が容易であるため、消費立地が可能となる。既存の発電立地に伴う送配電ロスが大幅に節約できる。例えば、自社ビルの屋上や地下室に発電プラントを設置して、送配電ロスをゼロ化することも夢ではない。

 詳しくはhttp://diamond.jp/articles/-/142890 を見ていただきたいが、興味深いのはこのプロジェクトをTTS(株式会社トリウムテックソリューション)という日本のベンチャー企業がやろうとしていることだ。
 しかも、理論上の話で実現は来世紀かと思いきや来年春からカザフスタンの国立核物理研究所で研究開発用原子炉による「熔融塩原子燃料モジュール」の炉内での照射試験に入るという。そのモジュールは軽水炉内でも使えるというからその実用性は驚きだ。もし成功への道筋が見えれば、日本だけでなく原発を停止して撤退しようとしている国々にも大変な恩恵となる。
 
 二つ目の技術はこれも日本で開発中の石炭火力発電所やゴミ焼却施設のCCU「CO2回収・利用・貯留(Carbon oxide Capture, Utilization,)」技術だ。
 詳しくはhttp://www.toshibaclip.com/detail/3646を見ていただきたいが、佐賀県佐賀市という一地方自治体が東芝とともに実際に取り組んでいるもので、昨年8月から商業運転を開始した。もともとは福岡県大牟田市の三川発電所内で開発していたものを清掃工場に適応した。
 分離回収したCO2を近隣の農業に提供する流れをつくることを考えた。排ガスに塩素が含まれるなど火力発電所より条件の悪い清掃工場で2年間の実証実験の結果、CO2を高純度で回収でき、さらにそれが農業に有益であり、人体には無害であることも確認している。

 この施設は2016年8月に運転をスタート、日量10トンのCO2を回収。藻類培養事業を行う民間事業者(株式会社アルビータ)が、抗酸化作用が強く健康食品などへの活用が見込まれるアスタキサンチンを多く含むヘマトコッカスという藻類の培養施設を清掃工場のすぐ近くに建設。CO2を気体のままパイプラインを通じて購入し培養に利用している。
 年間1000人を超える視察者が訪れている注目の施設だが、今年5月6日付の佐賀新聞によれば、施設の総事業費は14億5千万円。このうち5億円は国補助金。市は2016年度当初予算で764万円、17年度は1255万円のCO2販売収入を見込んでいる。
 さらに、清掃工場北側の用地約20ヘクタールを約18億円で取得・整備し、藻類関連企業に売却する。培養規模の拡大で収入は増加するとみており、将来的には1日10トンを回収、年間1億2千万円の売却益を見込んでおり、データはいずれ議会ですべて報告されるようだ。
 この施設では取り出した二酸化炭素を藻の培養に利用しているが、オランダでは二酸化炭素を野菜の栽培に利用している例もある。さらに水素を加えて再び燃料としてリサイクルする道もあり研究が進められている。日本は火力発電技術を得意としており、現在でも最新鋭の高効率石炭火力の建設計画が数多く存在し、海外でも途上国での火力発電事業に広く関与している。
 CCU技術を付加すればますます国際競争力がつき、欧米が環境問題で火力発電から撤退しようとしている中、絶好のチャンスが到来する。

 二つの技術開発は主役が街のベンチャー企業、一地方都市であること、現物が存在することが驚きだ。東芝も技術的にはすごい会社だということがわかる。うまい話には必ず短所、欠点があるはずだがその辺をしっかり確認出来れば、世界の潮流に棹さすことさえ出来そうで、個人的には大いに注目している。

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