日本エネルギー会議

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破綻回避(10)

 すでに見てきたように、いままで破綻回避を可能にしてきた条件は近年ことごとく変化を遂げ、破綻回避は困難さを増して来ており、このままでは核燃料サイクルどころか原子力開発計画全体が破綻してしまう可能性が出てきた。破綻はどのようにやってくるか。原子力開発計画を破綻させないで済むのはどんな場合かをリアルに論じ、この回をもって本シリーズを終了とする。
 
 破綻はどのような形でやってくるか

・原発の再稼働や新設に原子力規制委員会の審査と地元合意の二つのハードルが障害となり、今まで以上に時間がかかることで原発は経済性を失う。

・欧米の先行例のように原発の安全性を高めるため建設費が高騰することで、立地などの問題が解決しても資金回収の面から実施を躊躇せざるを得ない。

・新電力との競争だけでなく、電力会社同士の競争が進むこと、全体の需要が減ること、再生可能エネルギーの拡大で余剰電源が増えることで火力発電所の設備利用率が低下。電力会社の経営状態が厳しくなり、原子力部門にかけてきた費用と人材が維持出来なくなる。原発再稼働が出来ない電力会社は赤字が大きくなり電力会社は原発を廃炉するか、他電力に移譲することで原子力開発から手を引く。

・競争に勝ち残った電力会社も、原子力規制委員会から新たな知見の水平展開を求められ、今後の追加費用が予測不可能であるために廃炉を選択、新規建設計画を中止せざるを得なくなる。

・福島第一原発の事故の廃炉、除染、賠償の見積が、今後これ以上膨らめば、各電力会社はその負担で収支を圧迫され原子力開発を出来なくなる。

・再処理工場の本格稼働がこれ以上延期されれば日本原燃が財務的に破綻し、これが全電力会社の債務超過問題を引き起こし電力会社そのものの経営が破綻してしまう。

・国民の原子力に対する信頼が回復しないまま、年限を決めた脱原発を公約にする政党が政権与党になれば、すべての原発は廃炉に向かうことになる。新たな建設は認められず、原子力開発は止めを刺されてしまう。

・政権与党が原子力開発を推進する立場で電力会社を財政的に支援しようとしても、電気料金は福島第一原発の事故処理と再生可能エネルギー支援のために値上げの余地はなく、社会保障や防衛予算に大きな支出が見込まれるなかで、原子力への税金投入は国民の理解を得るのが困難となる。

・今後も原子炉メーカーが海外で損失を出せば建設機会が国内外とも失われ、技術者の世代交代が出来ず日本から原発技術がなくなる。

 経済的要因は電源間の安全性経済性の競争により容赦なく来るものであり、政治的要因は実施した結果次第では見直される可能性が高い。また、政治的に破綻させた場合は、その影響を緩和するための施策がなければならない。

 原子力開発計画を破綻させないで済むのはどんな場合か。

・現政権が選挙に勝利し、多くの原発の再稼働が進み、それらが安定的な運転を続けることで国民の信頼を回復。エネルギー基本計画の見直しでエネルギー安全保障や温暖化対策のために電源に占める原子力シェアが確保され、固定価格買取りなどを前提に新たな原発の建設原発が行われた場合。

・温暖化防止の国際約束を守るために石炭火力発電を制限せざるを得ない場合、あるいは中東危機などで天然ガスの輸入に問題が生じた場合。

・電力会社が共同で原発を運転管理や廃炉をする体制を整え、原子力発電がより安全かつ効率的になった場合。

・再処理工場が本格稼働するとともに、トリウム熔融塩炉など新たな技術でプルトニウム消費の見通しがたった場合。

・原発の再稼働や新設に係る原子力規制委員会の審査を規制基準を緩和せずに効率化することが出来た場合。

・原発の安全性を高めるための建設費が高騰しないように、電力会社、原子炉メーカーが協力して画期的な合理化を進めることが出来た場合。

・電力会社が火力発電所などの整理や事業の合併などで新電力との競争に打ち勝つことで、原子力部門にかける費用と人材を維持出来た場合。

・再稼働が無理な原発は早期に判断して廃炉するか、他電力に移譲する決断を出来た場合。

・原子力規制委員会から新たな知見の水平展開を求められた場合の追加費用、あるいは早期の廃炉による損失を国が肩代わりする制度が設けられた場合。

・再処理工場を国が買い取ることで、電力会社の債務超過問題が起きないように出来た場合。

・今後、原子炉メーカーが海外で損失を出した場合、これを補填する保険などの制度が出来た場合。

・福島第一原発の事故処理と再生可能エネルギー支援のための政府の支出に上限を設けることが出来、かつ政府の景気対策で税収を増やして、原子力開発に必要な予算をつけることが出来た場合。 

 各項目は単独で効力を発揮するものは少なく、総合的に対策を取る必要がある。経済的破綻を政治的に回避しようとすれば、それは国民の負担増に直結する。したがって電力会社など当事者には経済的破綻しないよう一層の効率化、合理化の努力が求められる。

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