日本エネルギー会議

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台湾の若者

 福島第一原発の事故後に台湾の原子力委員会に依頼されて避難の体験などを伝えるために東京消防庁の方とともに台北に赴いた。
 台湾は海に囲まれ、原発も首都である台北にごく近いところにあって、彼の地の原子力委員会の原発事故についての情報を得たいという願いは大きいと感じた。今度の福島の原発事故で何人死んだのかという質問があったので、「被ばくで死んだ人はいない」と答えたら「まさか」という反応だった。
 台湾訪問は初めてであり、わずかな日数の滞在ではあったが、町にはバイクが溢れ、若い人も高齢者も生き生きと暮らしており、台湾の経済的成功の裏には日本の高度成長期のような活気があると思った。
 空き時間に原子力委員会の事務局が案内してくれた安全センターは、台湾全土の防災、救命などの中枢機能を持つ施設だった。壁にはたくさんの大型モニター画面があり、何十人という若い職員が24時間交替で、全土の状況を監視しており、なにか緊急のことがあればその対応を指示する指令所であった。
 台湾は日本との外交関係はないが、一つの国家であり面積は九州より少し小さいが人口は2340万人。国会、裁判所、官庁、大企業、軍隊、海保、警察、消防、病院、大学、港湾、原発や火発、国際空港、ホテルなど、なんでもひととおりある。
 それぞれには一定数の要員が必要であり、大学進学率が日本より高いとはいえ、少ない人口でよくこれだけの人材を育て確保出来ていることに感心した。原子力委員会の事務局の若手職員も真面目で優秀だと思った。
 少子高齢化と言えば日本が最悪と思いがちだが、実は台湾は人口が少しづつ増えながらも、日本以上の少子高齢化になりつつある。合計特殊出生率は日本を下回り、世界最下位で、2010年には0.89という史上最低の数字を記録した。(日本の丙午のような迷信が影響したようだ)

 必要な重要ポストに人材が確保出来なければ国の安全が維持出来ず、輸出産業も壊滅する。若者が採用できないと当面は中高年でしのぐが、その先が怖い。大事な技術伝承が出来なくなる。再生産できなくなれば終わりだ。台湾は滅亡するしかない。
 ところで日本の原子力白書の本年版には「原子力分野を志望する学生が平成6年度をピークに減少している。福島第一原発の廃炉や放射性廃棄物の処理・処分など、さまざまな技術の確立に人材の育成と確保が必要」とあるが、その書きぶりにあまり切迫感は感じられない。
 日本でも、すでに各分野間の若者争奪が始まっており、採用戦線は完全な売り手市場となっている。何年か後に主要なポジションを務める幹部候補生としてアメリカ人や途上国の若者の採用を至急実現しなくては、台湾とともに日本の原子力は完全に没落してしまうだろう。

(参考)
2015年の世界の合計特殊出生率国別ランキング(世界銀行調べ)

 日本の下にこれだけいるというのは驚きだが、なぐさめにはならない。
 メルケル首相の移民受け入れの考えは理にかなっている。

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