日本エネルギー会議

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少なすぎる自主財源

 福島第一原発の事故の際に富岡町から避難した住民が真っ先に目指したのが西方に位置する川内村だった。面積は2万ヘクタールもあるが山林が半分以上を占める。
 ここ10年は毎年死亡と転出が出生を上回り、転出が転入を上回ってきた。人口は1955年の3153人をピークに減り続け、原発事故の前年の2010年には2820人になり、同時に高齢化が進み高齢者は人口の35パーセントに達した。寒暖の差は大きいが自然は美しく昔から林業が盛んだった典型的な山間部の自治体である。村では山菜や川魚が獲れ、温泉もある。
 放射能汚染が少なかったため、双葉郡では最も早く帰還宣言をした川内村だが、昨年度の村の収支報告を見て驚いた。2016年度の一般会計歳入決算では、歳入額99億円のうち、79億円が地方交付税、国庫支出金、県支出金であり、村税などの自主財源は20億円で、自主財源率はたったの20パーセントに過ぎない。
 全国の自治体の自主財源率は平均で54.4パーセント。自主財源比率が最も多いのは地方交付税を交付されていない東京都で81パーセント。2位愛知県、3位神奈川県と続く。地方の自治体でも平均は54.1パーセントだ。
 歳出の三分の一を占める災害復旧費36億円を除いた63億円で村の運営がされているが、それでも20億円の自主財源に対しては毎年40億円を外部に依存しなくてはならない。村の大半の避難解除が行われた後には、帰還に向けた除染やインフラの復旧とともに県内外からさかんに企業誘致活動を行い、ニュースでもよく取り上げられた。事故から6年半経過した現在は、住民の8割以上が帰還したが高齢化は以前より進んでいる。
 今の川内村を運営するためには、少なすぎる自主財源を補填する国や県の財政的支援が必須である。除染やインフラ復旧の作業は当初より格段に減っており、海岸沿いにある富岡町、大熊町などに比べ福島第一原発からは遠く、廃炉工事による経済効果はあまり期待出来ない。
 自給自足的農業や年金生活者からの税収は期待出来ず、企業誘致しても働き手が集まらないという問題を抱えている。村はシングルマザーなど移住希望者に破格の優遇策を提供しているが今後、高齢者の対応などにますます財源を必要とする。
 現在では避難解除がおくれた原発周辺の町に注目が集まっているが、最も困難に直面しているのは、川内村、葛尾村、田村市都路地区、浪江町津島地区などの山間部の自治体だということを理解する必要がある。
 自治体も景気による浮き沈みの激しい企業を誘致するだけでなく、福島第一原発用の送電線を活用して首都圏に電気を送ることが出来る環境を活かして、自治体が所有し運営するメガソーラー、間伐材によるバイオマス発電所、温泉熱によるバイナリー発電所などの恒久的財源を今のうちに確保して、都会からの移住者を勧誘したり高齢者を手厚くケア出来るようにすることが必要だ。

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