日本エネルギー会議

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限界費用ゼロ社会(3)

 エネルギーの生産・消費では限界費用ゼロがどのように達成されるのだろうか。限界費用ゼロ社会では現在の設備で生産量をもう1単位増やした時にかかる費用の増加分が限りなくゼロに近づく。したがって生産コストには、設備の建設コスト(償却費と言ってもよい)は含まない。
 人件費など管理費もほとんど増えない。つまり、「限界費用ゼロ」は、イコール「原料費ゼロ」ということになる。電力で考える場合、ある発電設備で発電量を1キロワットアワー増加させるのに要する増加費用ということになる。
 例えば、火力発電で考えると発電量を増加させるため火力を焚き増すのに追加する天然ガス、石炭、石油などの燃料費が限界費用の主なものとなる。原子力発電であれば全体コストに占める燃料費の割合は火力発電より少ないが、それでも核燃料がいくらかは減損し、使用済み燃料処理費が発生する。水力発電、太陽光発電、風力発電、地熱発電の場合は、発電に必要な太陽光、風、地熱などは費用としては現れないため、限界費用はゼロとなる。
 現在、日本ではFIT(固定価格買取制度)によって認定を受け系統接続を許された再生可能エネルギーによる電気を発電コストとは関係なく優先的に使い、その分火力発電を抑制しているが、太陽光発電や風力発電がコスト競争力を付けてきた場合、そして十分な供給力を持った場合は、市場原理によって上記のような優先順位で太陽光発電や風力発電や地熱で起こした電気が優先的に選択され供給されることになる。
 国際エネルギー機関(IEA)は今月、太陽光発電が2040年までに多くの国や地域で最も低コストのエネルギー源となるとの見通しを発表した。懸案となっている温暖化対策で考えた場合も、原子力発電や太陽光発電や風力発電が優先的に選択される。こうなると火力発電所の稼働率が大きく下がってしまい、火力発電所を多く抱える大手電力会社の経営が苦しくなっていく。
 それ以外にも安い電力が市場に出回る場合が考えられる。それは接続抑制により電力会社に受け入れられなかったり、FITの買取期間が終了してしまったりした太陽光発電や風力発電であり、そのまま捨ててもよいタダ同然の電気が発生する。
 それは市場に出回らなくても自家消費したり近隣の需要家に直接安く販売したりすることが出来る。また、買取り期間内でも電力系統事情で抑制を指示された場合、近隣に「おすそわけ」(専門的にはP2P…ピア・ツー・ピアと呼ぶ)することで格段に安い電力として流通することが出来る。
 「おすそわけ」を受けた側はその分、電力会社からの購入を減らせばよいことになる。「おすそわけ」をインターネットやAIを使うことでわずかな費用で仲介する業者も現れるはずだ。日本でも再生可能エネルギーは徐々に発電設備を増やしており、「おすそわけ」電気の元は徐々に増えていく傾向にある。火力発電を中心に電源を保有している電力会社は再生可能エネルギーの拡大やコストダウンに従って徐々に経営が厳しくなっていくだろう。
 大手電力会社は国がFITをやっている間に再生可能エネルギーにもっと積極的に投資をすべきなのではないか。新電力の再生可能エネルギーの出力不安定の尻拭いばかりやらされていて良いのだろうか。
 あえて原発や石炭火力にこだわるのは、いま所有している原発や火力の資産価値を守り、社員や関係者の雇用を守るためなのか。例え需給が逼迫する朝夕の時間帯の火力発電からの電力の価格を高くするなど対抗策を講じたとしても、結局ジリ貧になるしかない。
 電力会社は今のうちに新たなビジネスモデル、新たな収益源を見つける必要がある。20年以上前、東京電力の荒木社長は「普通の会社になろう」「兜町を見て仕事をしよう」と社内に激を飛ばした。その影響が残っているためか東京電力は最近ピットコインで使われているブロックチェーン技術で電力販売の仲介をするドイツの会社を買収したり、静岡県にある自社の風力発電所を神戸製鋼所製の圧縮空気を使った電力貯蔵施設と組んで実証試験をしたりして、この方面で全国の電力会社の先陣を切っているように見える。

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