日本エネルギー会議

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暗闇の中で

 先日、NHKのテレビ番組で福島第一原発の事故対応中の東京消防庁の活躍を振り返る番組を観た。すでに6年以上が経過したため映像が流れると、どこか他国の事のようにも思えた。映像では東京消防庁が自衛隊から消防による燃料プールへの放水を任され、深夜に現場で準備をする際に照明がないことがいかに危険な作業となるかがよく伝わってきた。
 消防車を現場に近づかせると放射線量が高いことに加えて、道路や設備の状況がほとんど把握出来ない。運転手に対して道路に穴があるので避けるようにと指示がされていた。人が得る情報の80パーセントは視覚から得ているが、事故時は停電することが想定されるため、夜間は広大な原発の敷地内で照明の届く範囲は限られることを覚悟しなければならない。
 原子炉への注水も現場照明もなくては対応が困難を極める。発電所の職員や協力会社作業員以外はいままで一度も来たことのない場所では状況がわからない。そのような時に視覚に制限があれば発電所側のガイドなしにはほとんど仕事にならないし、放射線被ばくに対する恐怖感が一段と増すものだ。
 原発は24時間連続運転しており、地震や津波の発生も昼間に限定されてはいない。それと同時に停電になる確率も高い。当たり前の話だが夜間に事故が発生する確率は50パーセントだ。夕方に事故が発生すれば、たちまち夕闇があたりを覆う。原発は海沿いに位置しているので、朝夕は濃霧の発生することもよくある。
 夜間の停電に備えての非常用照明設備や移動式の照明は準備されているはずだが、夜間にそれらを使って大掛かりな事故訓練をしているかと言えば昼間の訓練と同じだけはやっていない。夜間に訓練をすることは大きな負担だからだ。
 夜間訓練をやってこそ非常用照明などの数や位置、あるいは性能が適切であるかどうかがわかる。机上で考えたものでは実際に使って見るとハードやソフトに必ず問題があるはずだ。発電所側だけでなく、規制当局を始め、過酷事故時に動員される予定の関係省庁や自治体の職員に対しても、実践的な訓練として二回に一回は夜間に訓練をしておく必要がある。
 このように指摘しても、対応が困難なことは組織全体でスルーする場合が多い。最も当てはまる事例が、福島第一原発の事故以前の日本の原発における過酷事故を想定したリアルな事故訓練だった。

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