日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

大企業と不祥事(5)

 不祥事の原因の一つとしての社員の実力不足に関し、学力以外のことも考えてみる必要がある。企業内で要求される社員の実力とはどのようなものか。第一に組織の一員として果たさねばならない業務遂行能力であるが、それは学力がベースとなっているとしても、学力だけではないはずだ。
 学生時代は学力だけではなく、教育の現場や学生生活、あるいは家庭生活を通じて「学び方」を習得したり「自らの役割」を自覚したりする時期でもある。
 「忍耐力」「自主性・積極性」「自己評価・自己啓発力」「責任感」「正義感や遵法精神」「社会への貢献」「自我の抑制」「傾聴力」「相手の立場に立てる協調性」「倫理感」「資源節約」「環境保全」「バランスの取れた考え方」など社会の一員として、また企業の一員として持つべきマインドが植え付けられる。これらのマインドがどのように達成出来ているかは学力以上にデータで示すことが困難だ。
 一世帯当たりの子供の数が1~2人。共稼ぎ世帯の増加により家庭教育の時間が減る、兄弟から影響を受ける機会が減る。子供の数が減っているにもかかわらず大学の数が増える。このような状況は、社会に出る前に学校で揉まれる機会が少ないということだ。
 唯一の競争である受験も最近ではそれほどハードルではなくなってきた。新たに企業に入ってくる者の社会的マインドはかつてのように成熟したものではないと考えるべきである。企業においては先輩たちが新人を新人類と呼ぶこともあったが、年配の社員にはその考え方や行動が理解不可能になっていることを表している。
 企業内教育は新入社員の学力低下と社会的マインドの両方を補正する必要がある。さらに時代の要求で新たに教えなくてはならないことも増えているため、教育に当たる上司や先輩の負担はかつてなく大きいものとなっている。
 若い作業員が決められたことも出来ないようなことがあれば、上司や先輩がいちいち手助けしなくてはならない。これが、管理職が指示したり黙認したりしたデータ改ざんや違法行為の隠蔽につながっている。
 余裕のなさは思わぬ結果につながることもある。福島第一原発の事故調査で、若い運転員がICのことをよく知らなかったことが事故後に判明した。建設に携わった技術者や建設直後の運転員であれば緊急時におけるICの重要性、機能、操作方法を知っていたが若い世代の運転員は覚えることが多すぎるので、普段は使わない機器は重要なものであっても操作体験も含め学ぶことがなかった。
 今回の大企業における不祥事のオンパレードの中身を見ても、実質的に危険なもの、不具合の出る可能性のあるものは少なかった。不祥事を起こす側も上司や先輩が、実質的影響が少ないとの判断のもとに選択しながらルール違反をやっていたようだ。それだけに改ざんや隠蔽のやり方も巧妙で、管理すべき立場の者が率先してやっていただけに長い間、発見されなかったのだろう。
(つづく)

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter