日本エネルギー会議

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100年後(1)

 2015年12月に「パリ協定」と呼ばれる気候変動抑制に関する多国間の国際的な合意が採択された。気候変動条約に加盟する全ての国が参加し、翌年9月には温室効果ガスの二大排出国の中国と米国が同時批准した。
 議長を務めたフランスのファビウス外相は「この野心的でバランスのとれた計画は地球温暖化を低減させるという目標で“歴史的な転換点”である」と述べた。すべての国が参加して排出抑制義務を決めるという、これまでに例のない合意がなされたことにより、協定が締結された頃、世界には温暖化に対してなんとなく楽観的な空気が漂い始めた。
 しかし、その画期的合意を嘲笑うかのように協定の前後から気になるいくつかのニュースが世界各地から報告された。 

・100基の原子力発電所が稼働している米国では、CОP21の合意目標「気温上昇が2℃未満に抑制」が達成された場合でも、将来、少なくとも国内の13の原発が海面上昇で水没リスクにさられるとの政府の報告があった。
・米国ドミニオン社ミルストーン原子力発電所は、2012年に海水温度が安全基準の23.8℃を超え、23.9℃になったためタービンなどの施設の冷却に支障が出て一時的に停止した。
・2016年9月に東海地域で発生した猛烈な落雷によって、中部電力の送電線の一部が機能を停止。その影響で愛知県と岐阜県で合計36万世帯が停電。これに伴い「碧南火力発電所」が運転を停止し、広域機関が他の電力会社4社に対し電力融通を指示した。
・2015年に茨城県常総市で起きた鬼怒川の氾濫で大規模な太陽光発電設備が流された。しかし洪水で流されるより台風など強風でバネルが飛散する例が多く報告されている。
・2015年9月28日、最大瞬間風速81メートルを記録した台風21号の強風で、与那国島にある沖縄電力の風力発電設備の羽が折れるなどの被害を受けた。
・米国南西部では、2017年6月に過去最高レベルの熱波が発生。ラスベガスで最高気温が47.2℃まで上昇。カリフォルニア州でも、南部で52.8℃と最高記録を更新し、冷房需要の急増により電力供給側は大規模な停電を回避するため緊急措置を発動した。

 こうしたニュースは世界がエネルギー問題で高転びすることを予感させた。「高転び」とは戦国時代に毛利元就の家臣が、天下を取った信長ではあるが近いうちに突然おしまいになりそうなことを「信長様は高転びに転んでしまう」と元就に書いて送ったことによる表現。
 人類のエネルギー消費量の推移を見ると、21世紀初頭で100年前の4倍にもなっている。世界のエネルギー消費はあまりにも急カーブで伸びており、地球温暖化の原因である二酸化炭素の濃度も急激に上昇している。
 科学の常識からすると、このようなほぼ垂直に近い急上昇はソフトランディングせずに突然崩壊する。いままでそれほどでもなかった温暖化の影響が、遂に異常気象の頻発となってエネルギー問題を通して文明社会を根本から破壊する可能性が見えてきた。こうした予測は、過去のエネルギーの歴史を調べても、そこからは浮かび上がってこない。
 パリ協定が締結された頃、地球温暖化問題は、「原因である温室効果ガスの排出をどのように抑え、大気の温度上昇を産業革命以前からプラス2°C以内にするか」、「二酸化炭素の排出源である火力発電所などを廃止し、太陽光発電や風力発電など二酸化炭素を排出しないエネルギーをいかに増やすか」にもっぱら議論が集中していたが、事態はそのような悠長なものではなかったようだ。
(つづく)
  

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