日本エネルギー会議

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大規模自然災害と原発

 先月、広島高裁が安全審査に合格した四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求める仮処分の即時抗告審で昨年3月の広島地裁決定を覆して差し止めを命じた。伊方原発から130キロ離れた阿蘇山が巨大噴火し、9万年前の破局的噴火の規模なら火砕流が伊方原発に到達する可能性が否定できないというのが理由だ。これに対する全国紙の評価は割れている。
「あまりに極端だ。そうした噴火が起きれば、原発以前に九州全体が灰燼(かいじん)に帰するではないか」「原発に限らず、破局的噴火を前提とした防災対策は存在しない。殊更にこれを問題視した広島高裁の見識を疑わざるを得ない」とした全国紙がある一方、「周辺に火山がある原発は多く、影響は大きい」「世界有数の火山国である日本は、原発と共存することができるのか。そんな根本的な問いかけが、司法からなされたと言えよう」と評した全国紙もある。
 「仮処分で原発が即座に止まれば電力供給に及ぼす影響は大きいが、四国電力や規制委は広島高裁が噴火対策に憂慮を示した点は重く受けとめるべきだ」とバランスをとったがゆえに何を言いたいのか不明な論調もあった。
 私が現役時代にこのような質問が見学者からあると、「原発が壊れるくらいの大地震があれば、当然その地域にいる人は皆死んでしまいますね」とかわしていたから、この問題に対する答えはいまだに決定的なものはないことがわかる。大規模自然災害は大地震、大津波、 巨大台風、大洪水、大噴火、火山性ガスの大量発生などが考えられるが、その発生確率は相当程度低いがゆえに対策にどの程度の費用をかけるかが悩ましい。
 福島第一原発の事故のように核燃料が損傷し放射能が格納容器から外界に漏れ出せば、広い地域が汚染され、それこそ大規模な二次災害となる。そこが原発の困った点だ。東日本大震災当時、福島県の沿岸部は地震による被害も出たが、津波の被害が大きかった。
 警察や消防が懸命に救助、捜索にあたっている最中に原発事故によって避難指示が出てしまい、いわば「泣き面に蜂」状態になった。大規模自然災害が起きた時、原発を冷却し続けられる電源が確保されていればそうならなかったことは、福島第二原発や女川原発、東海第二原発が立証している。
 電源確保の観点からすれば火砕流より大量の火山灰の飛来の方が気になる。火山灰が送電線や屋外変電設備に与える影響や非常用ディーゼル発電機の運転に伴う給排気への影響が考えられる。福島第一原発の事故前に貞観津波の再来を警告した産業技術総合研究所が、今度は富士山宝永噴火レベルの噴火による火山灰が関東地方を襲ったときに停電しないよう火力発電所の空気取り込み口のフィルターの備蓄を増やす必要があると指摘した。これを受けて東京電力フュエル&パワーが来年度から東京湾岸の火力発電所などにおいて富士山噴火に備え火山灰防止フィルターの備蓄を始めるとの報道が最近あった。
 原発の場合、非常時の電源確保が命綱であり、100キロ離れたカルデラ噴火を考えるより、非常用ディーゼル発電機や可搬型のディーゼル発電機のフィルターの備蓄や取り替え訓練、ディーゼル発電機以外に風力発電機や大型蓄電池の設置、開閉所の屋内化など出来る範囲の対策を着実に行うことの方が優先されるべきと考える。

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