日本エネルギー会議

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100年後(2)

2.エネルギー供給源を直撃する異常気象  
 
 21世紀中に地球温暖化が異常気象を通じてエネルギー供給に及ぼした大きな影響は次のような点だった。
(1)海水温の上昇
 火力発電所や原子力発電所はタービン発電機方式であり、冷却水確保のため沿岸部に集中立地しているが、海水温度の上昇で復水器内の蒸気の冷却が十分出来なくなると定格出力が出なくなる。温暖化問題の前も夏場は海水温上昇で出力低下が見られたが、その後は、より多くの発電所で年間の発電量に影響するようになり、熱の除去が十分に出来なくなった発電所は停止せざるを得なくなった。対策として空冷方式を採用し冷却塔を建設することが考えられたが、寒冷地でなければ効率が悪く、それも気温の上昇で限界があった。

(2)海水面の上昇
 海面上昇の主な原因は、海水の温度上昇による膨張と氷河や氷床の融解で、20世紀の100年間に19センチ海面が上昇した。このままの状況が続いた結果、21世紀の100年間には最大82センチ上昇するとの予測が現実のものとなりつつある。陸地の沿岸部が水没していくと、そこにある火力発電所、原子力発電所、メガソーラーなども水没。原子力発電所構内には使用済み燃料の貯蔵施設があったため水没することでさらに大きな問題となる。
 パリ協定のころでも、すでにフィジー諸島など海抜の低い島では、高潮の際に住宅や道路が浸水していた。海水面上昇は世界中で起きており、特に日本海など閉じられた海域で大きな上昇が見られた。火力発電所が並んでいる東京湾、伊勢湾、大阪湾の海抜ゼロメートル地帯は海面上昇に加えて台風の影響により高潮による浸水の危険は徐々に高まっていった。
 満潮時や高潮で発電所構内に海水が入ってくるようになると発電所は防潮堤のかさ上げをしたが、それは対処療法に過ぎず時間が経てば、さらにかさ上げをしなくてはならなくなり、発電所は経済性を失うこととなった。
 石油や天然ガスを輸入する際に使用される受け入れ設備や貯蔵タンクも沿岸部にあったため、同じように高潮の危険にさらされ、日本の場合エネルギー資源のほとんどを海上輸送していたため、その影響は深刻なものになった。

(3)設計を上回る強風など
 台風などの猛烈な雨風や雷のためメガソーラー、風力発電所が破壊される事例が21世紀に入って各地で発生していた。風力発電の場合、風速が限度を超えると設備保護のため発電を停止せざるを得ない。スーパー台風や巨大竜巻に耐えられるよう強度を上げれば性能低下やコスト上昇を招いてしまうというジレンマに陥った。
 従来型の火力発電所、原子力発電所にも強風に対する問題があった。建屋は頑丈でも送電線がスーパー台風の豪雨や強風に耐えられない。それも数百キロの距離ともなればさまざまな地形があり完全な事故防止はほぼ不可能であった。特に原子力発電所は事故の初期対応は送電線による外部電源に依存している。外部電源を失うことは、過酷事故への備えである多重防護の最初の一つが失われることだった。 
 それまでにも関東の平野部での強風や四国の山間部の斜面の豪雨による崩壊によって送電鉄塔が倒れて送電線が切断した例もあり、記録的な豪雨や強風、それに激しい雷によってそうした事故のリスクはどんどん高まった。大型電源と送電網のトラブルは大停電を起こし、復旧にかかる時間が月単位であるため、その影響は深刻だった。
 原子力発電所は温暖化対策の決め手とされていたが、その冷却構造は火力発電所と変わらないために、海の大きな状況変化に対応することは基本的に不可能だった。2011年3月11日に福島第一原発を襲った大津波は、すでにその時点で電源が海沿いにあることの危険性を我々に警告していたのだ。
 温暖化が進むことにより、ある時点からの異常気象の変化は激しいものとなると多くの専門家が指摘していた。人が多く住んでいる温帯でも平均気温の上昇とともに伝染病や害虫が増え、フィリッピンなどで発生しているスーパー台風も日本近海などもっと緯度が高い地域で発生する頻度が年々増した。温暖化の指標となっている気温などの数字を見ると、傾向としては間違いなく上昇をしていたが、毎年上下動を繰り返していたため、人々は思い切った対策に踏み切れずにいた。間違いに気がついたのは大きな被害が出た後だった。

 

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