日本エネルギー会議

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国民に問われなかった選択(1)

 「それでも日本人は原発を選んだ」という本がある。タイトルは加藤陽子著「それでも、日本人は戦争を選んだ」をパクッたと思われる。だが、「…原発を選んだ」のタイトルはそのまま受け取れない。
 何故なら、多くの日本人が「自分は選択した覚えはない。気が付けば日本中に原発が50以上もあって、もんじゅは1兆円も掛けわずかしか動かさず廃炉。六ケ所村の再処理工場がいつ完成するかもわからない」と感じているからだ。それはいつのまにか戦争に巻き込まれた国民の気持ちと通じるものがあり、タイトルのパクリもそういう意味を込めているのかもしれない。
 安倍政権は「原発依存を出来るだけ少なくする」と言いながら、原発は重要な基幹電源と位置づけている。「我が国の安全基準は世界最高水準。原子力規制委員会の審査を通った原発は再稼働する。」と表明し選挙で圧勝した。原発の関係者の中には、これをもって「大多数の国民が、原発を支持し始めているように思われる」と言う人もいるが、安倍政権の勝利がそのまま原発支持につながっていると考えるのは早計だ。
 そもそも自民党の大勝は選挙制度のおかげであって、自民党は投票総数では獲得した議席ほどには票を取っていない。野党は基本的にほぼ脱原発であり、電源として2030年に原発を20~22パーセントにすることに反対している。
 地方選挙でも原発はたとえ立地地域であっても政策テーマや公約になることはほとんどない。有権者としては景気、社会保障、外交、防衛などさまざまな問題があり、最近では改憲がある。多くの場合、そのどれかに重点があり、中には「候補者の人柄」「他の内閣よりまし」という理由もある。
 今回の自民党勝利に小泉進次郎氏の貢献が大などと聞けば、AKBなんたらの選挙と変わらないような気もする。一途な信心よりバランスを考えることの得意な日本人は、今の野党の有様では与党に任せておく方が安全と判断したのだろう。というわけで、選挙結果から直ちに国民が原発を選択したとするのは間違っている。それは世論調査をすれば、少なくとも半分は原発を支持していないことからも判る。
 ではどうして戦後、日本は原発路線を取ってきたのか。誰が選択したのか。それは何故今日まで長続きして現政権もそれを踏襲しているのか。そのルーツは戦前まで遡る。幕末の開国後から西洋列強に対抗するため石炭と蒸気機関を使った近代産業の育成に走り、日本各地で石炭の採掘が行われたが、世界中で石炭から石油に切り替わった頃から日本には石油が採れないというハンディがつきまとうようになった。それが太平洋戦争の引き金のひとつになり、敗戦後も中東の石油の権益を得ようとする動きにつながった。
 二度の石油ショックにより、政治家と官僚はエネルギー資源を海外、とくに中東からの石油に全面依存することのリスクから逃れるために、原発というオルタナティブを持つことが必要だと考え、さまざまな形で支援を電力会社などに与えた。
 その結果は各地での原発建設と核燃料サイクル路線の採用であり、原発は発電量の3割を担うまでに成長した。その時点までは大多数の国民は政治家や官僚の原発推進路線を黙認していた。
 海外でスリーマイル原発事故やチェルノブイリ原発事故が起きたが、それにも国民の多くは動ぜず、原発路線の黙認を続けた。これはある意味、原発推進路線を国民が選択したと見てよい。だが、皮肉なことにその頃から次第に原発推進路線の躓きや綻びが見え始める。                             
(つづく)

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