日本エネルギー会議

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100年後(3)

3.21世紀半ばからのエネルギー事情  

 21世紀の半ばになると温暖化がもたらす異常気象は、従来型の電源はもちろんのこと、将来大きな依存を考えていた再生可能エネルギー電源さえも破壊しだした。そうなると脅威の迫る海岸などに立地するのではなく、人々が浸水を避けて移動した地域に新たな電源を作らねばならなくなった。またスーパー台風の強風や豪雨でも支障なく発電が出来るものが必要となり、年々の気温上昇による冷房用の電力需要の増加にも対応が求められた。
 まず、火力発電所や原子力発電所を海岸から離れたところに建設しようとしたが、冷却水の問題を解決するには大きな河川の下流域や湖沼から取水するか、巨大な冷却塔を必要とした。しかし、その敷地の確保には多くの困難が伴いなかなか進まなかった。
 そのころ、風力発電と太陽光発電は、水素を製造することで出力の不安定さを克服し中核的な電源となっていたが、その設備を強風に破壊されないようにする研究開発が進められた。また、日本のベンチャー企業が先鞭をつけた台風の時にも発電出来るマグナス型風力発電装置が従来のプロペラ型に替って盛んに建設された。
 太陽光発電設備は強風や竜巻への対策が難しいため、印刷技術の応用で極めて低廉で軽く柔軟性のあるパネルが開発され、建物の外壁、窓、構造物、車の車体などあらゆるところに貼付けられ、それがスーパー台風で破壊されたとしても、全体からすればわずかなダメージと割り切ることになった。
 これは昆虫や小魚が何万個という数の卵を産んで産卵させることで、一部が天敵の犠牲になっても種として生き残りが出来るようなシステムに似ている。
 地熱発電は温暖化の影響を受けることが比較的少ないが、消費地への送電の問題があるのは原子力発電所などと同じである。いずれにしても異常気象から長距離の送電線を守ることが困難になったため、電力は地産地消型に向かった。  
 波力、潮力、温度差など海洋エネルギーは設備投資やメンテナンス費が大きく商業化は困難を伴った。有望視された国産エネルギー資源であるメタンハイドレートも、燃やせば温暖化ガスの排出に繋がることから開発もブレーキが掛けられている。二酸化炭素排出規制の強化で石炭火力発電所が全面禁止、また、電気自動車がガソリン車を駆逐して石油需要から輸送部門がなくなっている。
 宇宙太陽光発電は20世紀の終わり頃から研究が盛んになり、マイクロ波送電、ビーム送電など必要となる基礎技術が開発された。その長所として地上の太陽光発電に比べて設備あたりの発電量が多く、一年を通して24時間発電することで、安定したエネルギー供給が可能なうえに、資源の枯渇の心配が無い。
 短所は初期投資が非常に高額なこと、太陽電池の面積が巨大になり宇宙塵やスペースデブリなどへの対処が難しい、地上のある地点へのエネルギー照射は軍事転用や「誤射」のリスクが伴う、宇宙空間では地上に比べて設備の劣化が激しいが宇宙での大型構造物であるため故障した場合の修理が難しい、衛星軌道上に設置した場合頻繁に軌道修正が必要でコストがかかる、レーザー伝送が天候に影響を受けるなど。原子力発電所と同様、大出力であるための安全面での課題が多く開発、実用化が遅れる原因となっている。
 太陽光の利用ではソーラーパネルで発電するのではなく、触媒を使って水から直接水素を作り出す方法が21世紀初頭に日本のメーカーによって開発され、今は実用化段階となって世界中で盛んに建設がされている。海水冷却も不要であり、設備もシンプルで安全性も高く、温暖化が進んでも使えるエネルギー源として存在感を高めている。
発電設備ではないが、各国をつなぐ海底ケーブルの敷設も温暖化による異常気象対策として重点的に投資が行われた。これには超伝導ケーブル、直流送電などの技術進歩が貢献した。地球規模の送電網を作り上げることにより異常気象などによる供給支障が起きた場合、社会的混乱を巻き起さないようバックアップをすることが可能になっている。
 自動車や船舶の電動化は化石燃料を使った場合に比べて数倍も効率がよく、その分省エネとなっている。また、ネガワットによる節電の喚起は新たな電源開発を抑制するものと評価され、その他に遺伝子工学を応用した植物や藻の増殖により二酸化炭素を吸収する技術も開発されるなど、過去に行われていた温暖化対策イコール化石燃料の使用抑制といった単純な発想ではなく、広く問題解決を考えるようになっている。               
(つづく)

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