日本エネルギー会議

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解除が最後になった区域

 福島第一原発に近い大熊町、双葉町、浪江町、富岡町にある帰還困難区域の指定解除はこれからだ。国は最後に残された帰還困難区域を除染してインフラ整備も行い住民が戻れるようにする計画を最近明らかにした。
 環境省によれば、解除は第一期と第二期の二段階で行われる。第一期は今後5年間かけて特定復興再生拠点区域に指定した範囲を国が除染し、自治体がインフラ整備をすることで住民が戻れるようにする。私の家のある第二期の区域は第一期の区域が終了したあとに続いて除染するとしている。
 どこを特定復興拠点区域にするかは各町が提案することにしたため、どこを優先して除染するか町にゲタを預けた形だ。富岡町によれば、当初は帰還困難区域全体を一挙に除染し解除してもらいたいと国に要請したが聞き入れられなかった。各町は住民の希望を聞くために説明会などを開催し、調整に汗を流した。
 先日、各町はそれぞれに第一期の特定復興再生拠点区域案を住民に示した後に最終案を国に提出した。それを見ると多くはJR常磐線の駅周辺、町役場周辺、国道6号線沿い、常磐自動車道インター接続部分、住宅が密集し人口が多い場所が選ばれている。
 農地が多く人口密度が低い区域はおおむね第二期にまわされている。帰還困難区域住民への直近のアンケート調査結果によれば、帰還する意志のある住民は1割しかいない。町はその中でも少しでも帰還が期待出来る区域を選んでいる。元の住民に帰還を促すほかに新たな住民を呼び込むにも交通アクセスは大事な要素だ。
 そのような選択結果はある程度理解しなくてはならないが、問題は第一期の解除が5年後(事故発生から12年後)、第二期の解除が今から10年後(事故発生から17年後)になることだ。帰還困難区域の住民に対しては、一人あたり月10万円の精神的損害に対する賠償が先に解除された居住制限区域に比べて75ヶ月分余分に支払われているが、これは「ふるさと喪失」として支払われているため、新たな賠償は発生しないというのが町の説明だ。
 要するに第一期の住民も第二期の住民も精神的損害は同額である。さらに5年も帰還を待たされる第二期の住民は納得出来ないだろう。
 既に去年の春に解除された富岡町の居住制限区域には現在までに人口の数パーセントにあたる400人程度の住民しか戻っていないが、住民は避難したまま土地や家屋を除染や福島第一原発の廃炉の仕事で県内外から来た工事業者や企業の出先機関の人たちの宿舎や駐車場、材料置き場などに長期契約で貸して賃貸料収入が得ることが可能となっている。東電は不動産については都会でも住居が購入出来るだけの十分な賠償を支払っているが、所有権は住民から取り上げていないため、住民にとっては思いがけず大きな安定収入が得られる機会が生じている。
 これを帰還困難区域の住民はいままで指をくわえて見ていたが、5年後には自分もそのような状況になる。特定復興再生拠点区域は先に述べたように交通の利便性の良い場所であるため不動産取引は大いに期待出来る。
 そうなると第二期の住民からは不満が出そうなものだが、そのような意見はあまり聞かない。理由は第二期の区域の住民の多くは農家であり、広い田畑を除染で出た放射性廃棄物の仮置き場として相場から見ればはるかに高額な賃貸料で環境省に貸しているからだ。
 第二期の区域に行くと大量の放射性廃棄物の入ったフレコンバッグが見渡す限り積まれてシートで覆われている。先日の説明会で「第二期の区域が解除される今から10年後までにあのフレコンバッグが中間貯蔵施設へ搬出されるという約束を環境省はしているのか」と質問したところ町の回答は「痛いところを突かれました。実は約束は出来ていません」とのことだった。
 第二期の区域では帰還する意思を持っている住民はほとんどおらず、解除が遅れることで賃借料がより長く入ってくることの方を望んでいるのかもしれない。(この区域では私のような非農家は少数派である) このように帰還困難区域の解除方法は多くの住民が納得するように決められたのである。

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