日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

100年後(4)

4.バベルの塔     

 昨年夏に上野の東京都美術館で「バベルの塔」展が開催され、壮大な風景と驚異の細部が凝縮されたブリューゲルの最高傑作を多くの人が鑑賞した。そのバベルの塔とは旧約聖書の中に登場する巨大な塔で、実現不可能な天に届く塔を建設しようとして崩れてしまったといわれている。
 旧約聖書によれば、神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた。しかし人々はこれに反抗し、新技術を用いて天まで届く塔をつくり人間が各地に散るのを免れようとした。神はこの塔を見て、人間は言葉が同じなため、このようなことを始めたと考え、人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにした。このため、人間たちは混乱し、塔は崩れてしまった。
 2016年頃からヨーロッパ諸国へ中東から大量の移民流入があった。イギリスのEU離脱が決まり、米国では経済格差の拡大を背景に社会の分断が産んだトランプ大統領が昨年「世界第二位の二酸化炭素排出国である米国のパリ協定からの離脱」を決め、パリ協定に参加した世界各国に衝撃を与えた。
 こうした一連の流れの背景には米国のイラク攻撃に端を発した中東の混乱と、グローバリゼーションの浸透により資本のみならず雇用や市場までを国境を超えて自由に移動出来るようにしたことで、取り残された人々が大量に生まれたことがある。
 彼らの不満の受け皿としてイギリスではEU参加による過度の負担が槍玉に挙げられ、米国では人々の雇用や資源を守るために自国ファーストに徹すべきと主張する指導者が選ばれ、何世紀もかかって築きあげてきた国際協調体制が破壊されようとした。
 被害を受けた人々は全体がまとまるために必要な犠牲や譲歩に我慢が出来なくなったのだ。その様子はバベルの塔に怒った神が、人々の共通の言葉を奪ったくだりに似ている。地球温暖化を抑止するためのバベルの塔の建設(各国の合意)は途中で大きくつまづき、これによって必要な温暖化対策が遅れ、解決がさらに困難になりエネルギー供給そのものに暗い影を落とした。                                 (つづく)

 このシリーズは、昨年7月に世界的に著名な物理学者スティーブン・ホーキング博士が、「地球温暖化は後戻りできない転換点に近づいており、地球上の気温はいずれ250度まで上昇する。アメリカのパリ協定からの脱退で気温上昇がさらに加速する」と警告を発したことにヒントを得て書いたものです。

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter