日本エネルギー会議

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国民に問われなかった選択(3)

 三人の元総理大臣が「即脱原発」という劇薬を国民に飲ませようとしているが、そんなリスクを是認するほど国民は脱原発に熱くはなっていない。しかし、住民の避難計画作成、再稼働、廃炉、新増設、使用済み燃料の保管・再処理、高レベル放射性廃棄物の処分、福島第一原発の事故の跡始末など国や電力会社が実施しようとしていることのほとんどが停滞気味だ。停滞は巨額の出費を伴い各電力会社の体力を奪い続けているが、まだその一部しか明らかにされていない。(例えば電力会社は福島第一原発の事故以降に1ワットの電力も出していない日本原電に年に1000億円もの基本料金を支払っていることは最近になって報道された)
  課題の先送りもそろそろ限界が来ている。L3放射性廃棄物の処分には目処がついたものの、L1、L2の処分先が見つからなければ東海発電所の廃炉はそこで止まる。他の廃炉もいずれそうなる。各地の原発の使用済み燃料貯蔵プールの限界は日いちにちと近づいてくる。
 福井県知事は県外の中間貯蔵施設建設の主張を降ろさない。青森県にある高レベル放射性廃棄物の仮保管期間の期限も年々少なくなっていく。もんじゅが廃炉になったため、プルトニウムの消費は各地で再稼働した原発でMOX燃料として使う方法しかない。青森県大間で建設中のフルMOX原発は着工から10年が経過したが今年また運転開始予定が先延ばしになった。福島県知事はトリチウム汚染水の海洋放流にいまだに抵抗しタンクの増設は続いている、知事は福島第二原発の廃炉も執拗に迫っている。その間にも神戸製鋼所のデータ改ざんが明るみに出たり、高裁が再稼働した原発を停めたりしている。
 今のような状況が続けば各原発のサイト内に乾式の中間貯蔵施設を建設して使用済み燃料を長期保管するしかないため、既に各電力会社は建設に向けて動き始めている。これが最終的にだめだとなると再稼働した原発は停止せざるを得なくなり最悪の事態になる。電力各社がなんとか中間貯蔵施設を造れたとしても、先例に従って地元に保管年限を約束させられる可能性が高い。再処理工場が操業を開始出来れば状況は若干なりとも緩和されるが、すぐに電力会社が使用済み燃料を持ち込めるわけでもない。
 そうなる前に国民に原子力政策を問うべきだが、それはなるべく早い方が良い。逡巡している間にも事態は悪化し続け、電力会社も新たなエネルギー政策の中で存立し続けるための体力を奪われてしまう。巨費を無駄にした挙句にロクな選択肢しか残らないことになり、結局負担は選択を問われなかった国民に来る。そうなれば国民も何故早く問わなかったのだと怒るだろう。
 我が国としてバックエンドも含め原子力にどのようなビジョンを描くのか、原発復権派、脱原発派どちらもこれからの具体的戦略を国民に示すべき時が来ている。特に即時脱原発を主張している人には、海外からの天然ガス輸入ストップや火力発電所の広範囲な津波による火力発電所群の被災に対して電力供給をどのようにしのいで死者を出さないようにするかを説明してもらわねばならない。
 福島第一原発の事故後のドイツの脱原発、再生可能エネルギー依存の政策については、多くの矛盾もあり結果的にドイツ政府も苦慮しているところがあるようだが、少なくともオープンな議論をして素早く国民に政策を示したことは、日本の場合とは違うという印象がある。おそらく国民性にもよるのだろう。井上寿一の「戦争調査会」を読んだせいか、満州事変以降何故か中国大陸での戦争を収束させる議論がまともに出来なかった日本のことが思い出されてしかたがない。                       
(つづく)

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