日本エネルギー会議

  • 設立趣旨
  • お問合せ

「原発推進者の無念」の著者が原発事故1周年後の心境を語る その10

原発事故に伴う避難に関して大きな動きがあった。昨日、渡辺利綱大熊町長が「不帰還宣言」を出し、大熊町民が5年間は帰還しないことを明らかにした。町の95パーセントが政府の「長期帰還困難区域」となるため、町のほぼ全体が少なくとも5年間は帰還出来ないと判断したためだ。大熊町の住民一万五千人は、現在県内外に避難しているが、いよいよこれからの生活をどこでするかの決断を迫られる。町が政府の「長期帰還困難地域」の指定を受け入れたことにより、大熊町民は一人600万円の精神的損害補償を一括して受けることになる。また、懸案であった土地・家屋・家財に対する補償も進むはずだ。また、仮設住宅や借り上げ住宅の支援打ち切りも見えてくる。
町長は県内に数カ所に「仮の町」を造って、住民をここに集め、ばらばらにならずに帰還を待つことを計画している。だが、事故から一年以上たった現在でも、年間20ミリシーベルトの線量がある大熊町に6年目になれば帰還が始まるとは住民の誰もが思っていないだろう。一部の住民はすでに、いわき市などに家を購入し始めている。時が経つにつれて、この動きは広がりそうで、そうなれば大熊町民ではなくなって税収も落ちてくる。また、いわき市など周辺の自治体は、大量の避難者による自分たちの負担が重く、「この町から出て行くか」それとも「この町に住民票を移す」かにしてもらいたいというのが本音だ。
大熊町の決定は、周辺の双葉町、富岡町、浪江町など部分的に「長期帰還困難区域」(双葉町の場合、約1/2)となる自治体にも大きな影響を及ぼしそうだ。避難者は精神的損害補償が6年目以降どうなるかを心配している。すでに立ち入りの制限が解かれた区域に対して、新しい東電の社長は、解除後もしばらくは精神的損害補償の支払いを継続することを明らかにしている。「不帰還宣言」は5年間のものであり、永久に帰還しないとしたものではない。となれば、住民は6年目からも「帰還出来ないこと」に対する補償を期待しても当然だ。
不確定な要素が多いが、避難が何年にもなれば、住民の約四分の一を占める高齢者が亡くなることで、補償対象となる住民の数が減少することだけは確実である。

2012.6.3
北村 俊郎

  • データベース室
  • エネルギーとは?
  • 世界と日本のエネルギー
  • 原子力の論点
  • 放射線と健康
Facebook Twitter