日本エネルギー会議

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国民に問われなかった選択(4)

 国や電力会社が原発の再稼働と電源に占める一定の割合を主張するのは国のエネルギー安全保障に関して責任ある立場として当然のことである。ただ、安倍内閣の方針には国民を納得させるという点で不十分なものがある。
 閣議決定では「原子力を重要なベースロード電源と位置づける一方、原発依存度を可能な限り引き下げる。再生可能エネルギーを最大限導入する」としたが、「ベースロード電源にしておくことと可能な限り引き下げること」は矛盾しているとしか思えない。これは説明してもらわねばならない。また、2030年に原発の全電源に占める割合が20~22パーセントとしているのは現状からすれば新増設の方針が隠されていると見えてしまう。
 野党側は即脱原発から原発容認まで幅があるが、これまた目標達成までのさまざまなリスク(第三次オイルショック、次の大震災、温暖化目標未達、過大な国民負担、我が国特有の再生可能エネルギーの高コストや不安定対策など)に関して具体的な方策を示さないままである。立憲民主党が近く脱原発法案を国会に提出するようだが大いに結構なことだ。各党からもエネルギー政策における原発の位置づけなど具体的な裏付けとタイムスケジュール付きの方針をしっかり聞きたいものだ。
 安倍政権にしても、「原発依存度を可能な限り引き下げる」のは何故かの説明がない。原発は安くて安全で環境にもよいと言うのなら何故引き下げようとするのか。福島第一原発の事故以来、原発が国民に人気がないから可能な限り依存度を引き下げると言わなければ内閣支持率に影響するからそう言っていると推察するが、あながち外れてはいないだろう。
 国民に選択を問うにしても、何を問うか争点を明らかにする必要がある。国の根幹にかかわる問題であるから理念だけでなく、しっかりした根拠と見通しがある選択肢であるべきだ。ドイツはやや理念先行のような気がする。
 もうひとつ大事なことは計画や目標を決めるのはよいが、もしそれが達成出来ないことがわかった時点でそれに固執することなく目標や計画を見直すことを宣言する必要がある。同じように再生可能エネルギーについても不安定さをカバー出来る経済的な方策が見つからず、賦課金など国民負担が過大になりそうな時は、躊躇なく方針の見直しに入ることを約束してもらう必要がある。このことは極めて大事である。何故ならいままでのエネルギー政策の混乱の原因のひとつが「再処理路線ありき」のように既定の方針に固執しすぎたことにあったからである。
 国民に選択を問うきっかけとして電力不足で首都圏あるいは関西、中部で大停電が起きることが考えられるが、大停電が起きてから国民に選択を問うことは避けなくてはならない。大停電はもし起きたとすれば凄まじい混乱と損失が発生するからだ。夏や冬の気候が厳しい時に大停電など起きれば死者が多数出ることだろう。
 送電系統の事故でなく、電源側の事故が原因で発電量が不足して大停電になったとすると、政府や電力会社は「何故電力が不足したのか、その場合の対策はどうしていたのか」などについて国民から強く責められるに違いない。推進派は動かせる原発を停止させたままにしておいたことが問題であると主張し、脱原発派は逆に、原発や火力など従来型の電源に依存しすぎで再生可能エネルギーの開発が欧米に比べて遅れていたことが問題だったと言い、結局は建設的な議論がされない恐れがある。

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